今月11~14日に米国で開かれた世界医師会(WMA)シカゴ総会で第68代WMA会長に就任した日本医師医会の横倉義武会長は18日の会見で、「日本の医療制度の良さを世界中に広めることが大きな役割」と抱負を述べるとともに、総会において、医の倫理の規範である「ジュネーブ宣言」改訂版が採択されたことを報告した。
WMA会長の任期は1年間。日本人の就任は武見太郎元日医会長(第29代)、坪井栄孝元日医会長(第52代)に次ぐ3人目。
「ジュネーブ宣言」は、2年にわたり改訂作業が続いていたもので、患者と医師の関係、医師同士の関係がこの数十年変化してきたことを反映することに焦点を当てたとする。具体的には、患者のオートノミーの尊重、教師、同僚、学生の間における双方向での尊敬と敬意など、現行バージョンにはない重要な倫理原則に重点を置いた。近く、和訳を公表するとしている。
このほか総会では、医学部教育の世界水準を高めるための「医学教育における質の保証に関するWMA宣言(シカゴ宣言)」が採択された。
会見で横倉会長は、「WMA会長就任挨拶の中で強調したのは、経済学者の宇沢弘文先生が唱えた社会的共通資本(用語解説)という考えを世界中に広めるという理想を掲げて世界医師会を進めていくということ。日本の医療制度の良さを世界中に広めることが大きな役割」と決意を表明。今後の活動については、「世界にはさまざまな課題があるが、特に気候変動に対応できる社会づくりについて検討していかなければならない」との問題意識を示すとともに、「人間が生活するには平和が1番重要な課題。平和な世界をつくるために医療人に何ができるかも話していきたい」との考えを示した。