No.4887 (2017年12月23日発行) P.72
仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
登録日: 2017-12-20
最終更新日: 2017-12-18
「ひとり今年の10冊」のシーズンがやってきた。といっても、昨年からなんですけど、恒例化するつもりなので、よろしく。
イチオシは『かくて行動経済学は生まれり』(文藝春秋)。人間は古典的な経済学が説くような合理的判断ばかりをするのではない、というのが行動経済学の基本である。
その学問は、2人のユダヤ人によって打ち立てられた。その2人の伝記と、後に行動経済学と呼ばれるようになる学問が成立していく物語である。最後、2人は袂を分かつのであるが、その行動は、とてもこのような分野を切り開いた学者とは思えない。
次は物理学関係の本、といっても学問の本ではない。ニュートン、ハイゼンベルク、湯川、仁科ら計13人の『物理学者の墓を訪ねる』(日経BP社)という内容だ。写真も豊富で楽しめる。老後の趣味のひとつに、好きな人の「掃苔」というのはなかなかいいのではないかと秘かに思っている。
このエッセイでも頻繁にぼやかせてもらっているが、大学教員の端くれとして教育も興味あるテーマのひとつである。ちょっと学術的な本なのだが『教育劣位社会』(岩波書店)には考えさせられた。
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