慢性頭痛の患者さんには、頭痛の性状や治療がうまくいっているかどうかの判定に頭痛ダイアリーを使用する場合がある。これは簡単な頭痛日記ともいうもので、1カ月単位で日にちごとに箇条書きで頭痛の程度や、日常生活への影響度、飲んだ薬の種類などを書き込むものである。
ただ、ここで一つ問題がある。これは大人の場合には問題がないのだが、子どもさんの場合には自分自身ではうまく頭痛ダイアリーが書けない場合があり、親御さんに書いてもらったりなど苦労する場合がある。
私が和歌山県立医科大学脳神経外科学講座から千葉大学先端和漢診療学講座に異動し、千葉大学の外来を始めて間もない2010年頃に、当時小学3年生の頭痛の女の子が受診した。日本頭痛学会の慢性頭痛の診療ガイドラインでは、小児の頭痛の治療はアセトアミノフェンかイブプロフェンが標準治療となっているが、この子は標準治療でも頭痛がうまくコントロールできないため私の外来を受診してくれた。
とてもおとなしい子で、ほとんどお母さんが話をして本人は下をむいて話さず、私も困ってしまった。話をしてもらう意味もあって、「何か好きなことはある?」と聞いてみたところ、「絵を描くのが好き」という答えであった。それで私は「どんな風に頭が痛いか、今度の受診までに絵を描いてきてくれる?」と頼んだところ、黙ってうなずくのみであった。
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