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〈総論Ⅰ〉インタビュー  医師こそ活用したいアンガーマネジメント

登録日:
2019-02-07
最終更新日:
2019-02-08
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  • “医師こそ活用したいアンガーマネジメント”について、日本アンガーマネジメント協会公認ファシリテーターである野口由紀子氏にお話を伺った。

    怒りの感情と上手に付き合う

    ▶まず、「アンガーマネジメント」とは、どのようなものなのかお聞かせください。

    1970年代に米国で生まれたとされる、怒りの感情と上手に付き合うための心理教育、心理トレーニングです。怒らないことを目的とするのではなく、怒る必要のあることは上手に怒れ、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになることを目標としています。協会では、「怒りで後悔しないこと」と教えています。

    ▶どのような分野で活用されていますか?

    企業研修や医療福祉、青少年教育、人間関係のカウンセリング、アスリートのメンタルトレーニングなどの分野で幅広く活用されています。中でも企業研修の需要は高く、多くの企業が研修を導入しています。

    ▶医療従事者には、どの程度知られていますか?

    協会に所属するファシリテーターの分布(2018年)を見ると、男性が3割、女性が7割で圧倒的に女性が多く、40~50代が7割に上ります。米国では男性が学ぶことが圧倒的に多いのですが、日本では女性の受講者が多い。医療・介護従事者は全体の12.0%で、“感情労働”と言われる看護師や介護士の受講が多いですが、医師にはまだまだ浸透していません。

    ▶野口先生がアンガーマネジメントに興味を持ったきっかけは?

    2013年に女性のための統合クリニック「イーク丸の内」の院長に就任し、管理職的な視点で働く必要性を感じていた頃、尊敬する友人に紹介されたことが、学び始めたきっかけです。

    医療現場は“怒りの渦”

    ▶それ以前は、医師として働きながら、どのようなことで怒りを感じていましたか?

    私は内科医ですが、医師に成り立ての頃はやる気満々で、高血圧や糖尿病など慢性疾患の患者さんがどうしてきちんと治療を受けないのか、食事や運動療法などの自己管理がどうしてできないのか、理解できませんでした。あるいは救急外来で、「こんな時間にこんなことで来てほしくないなぁ…」という患者さんなど、医師なら皆さん経験があるかと思います。周りのスタッフが指示通りに動いてくれないときは、「~してよ」と直接怒りをぶつけていました。
    特に、夜中に「眠れません」と言ってくる患者さん、結構イラッとするんですけれども、そこで怒っても解決しない。自分も眠れなくなるし、そういうときは優しく対応したほうがいいんだな、ということに気づき始めました。患者さんが何故そう思っているのか。どうしてその時間に来るのか。理不尽だとしても、とても不安だったなど、それなりに理由がある。そうした感情に寄り添うことが大事なんだな、ということに気づいたのです。
    医療現場って、怒りの渦なんですよね。特に患者さんは、痛いとか苦しいとか何かしら抱えて来ているので、スタッフに親切にしてもらえなかったとか、待ち時間が長いとか、ちょっとしたことでイライラが募り、怒りが増幅してしまう。付き添いの家族も不安を抱えていますし、我々医療従事者は、常に一定以上の緊張感を伴う医療行為に携わっている。医療機関はそういう人達が集まる場であり、日常生活を送る場に比べ、ストレスが怒りに繋がりやすい環境だと言えるんです。

    ▶アンガーマネジメントを受講して、一番の学び、気づきは何でしたか?

    アンガーマネジメントは怒らないことではない。初めにお話ししましたが、必要のあることは上手に怒って、必要ないときは怒りを表さないようにするというのは、とても大きな学びでした。これは、トレーニングすれば誰でも身につけることができます。衝動で怒らなくなり、思考や行動をコントロールすることの重要性を知りました。

    ▶人間にとって、怒りとは何でしょうか?

    自然な感情の1つで、必要なものなんですよね。怒りのない人はいないし、なくすことも不可能です。伝達手段であり、身を守るための感情でもあり、怒りを自分のパワーやモチベーションに変えるというメリットもあります。
    ただ、不必要に怒ると損をします。他人を傷つけて人間関係を壊したり、仕事に支障をきたしたり、溜め込んで激しい怒りに変わったり。あるいは、血圧が上がるなど自身の健康にも影響を及ぼす。人によってはモノを壊したり、それが自分に向かうと自殺や自傷行為となります。
    問題となる怒りには4つの特徴があります。①強度が高く、小さなことでも激高する、強く怒りすぎる、②持続性があり、根に持つ、思い出し怒りをする、③頻度が高く、しょっちゅうイライラする、カチンとくることが多い、④攻撃性があり、他人や自分を傷つける、モノを壊す─というのは問題です。

    自分の怒りのタイプを知る

    ▶怒りの表現方法にはタイプがありますか?

    6つのタイプがあります。

    1)公明正大

    “熱血柴犬”。「電車で騒いでいる人を見るとイライラする」「会議に遅刻してくる後輩に腹が立つ」など、マナー違反や、規則にルーズな人を見ると怒りが湧いてくるタイプです。正義感が強く使命感に燃えているため、他人のことに口出しをして人間関係をぎくしゃくさせてしまう。わざわざマナー違反の人をじっと見たり、不正がないか監視したり、怒りの源に注目しがちです。信念を曲げると負けた気になるなど、“勝ち負け”で物事を捉えがちなところもあります。高過ぎず、低過ぎず、意識のバランスを保つことが大切です。周りの人の考えや行動を尊重する気持ちを持つことで、自分も人も楽になります。

    2)博学多才

    “白黒パンダ”。白黒はっきりつけたい完璧主義者。向上心があり、「自分にも他人にも厳しくあるべき」と考えがちで、優柔不断や適当な人が許せません。でも、それでは周りの人は大変なので、常に頭と心を柔軟にすることを心がけましょう。「これくらいでいいか」というグレーな事柄、様々な価値観を受け入れることを意識し、時には諦めることも必要です。

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