2004年卒の私が皮膚科医になって約20年が経つが、十数年前はまだ美容医療というと“金儲けに魂を売った”イメージが強かった。かくいう私も専門医試験に合格し、大学で診療していた頃は同じように思っていた。ところがある日、顔面の基底細胞癌の皮弁術後でフォローしていた患者さんが、とても暗い顔をしていた。大層上品なマダムで、術後の病室でも朗らかに笑う素敵な方だっただけに、暗い表情が気になって「術後の経過は大変よいのですが、何か気がかりなことがありますか?」と尋ねた。すると、彼女は悲しげにこう答えた。「先日、白内障の手術をしたんです。そしたら顔じゅうシミだらけで……。こんな汚い顔で生きてきたなんて、とても恥ずかしくって」。
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