□嘔吐時にはすぐに顔を横に向け,誤嚥を予防する。
□吐物が口腔内に残るときは,見える範囲で掻き出すか吸引する。
□継続して嘔吐が起こりそうであれば,側臥位で管理する。
□呼吸・循環モニタリングを行い,経時的な変化を把握する。
□高度意識障害時には咳嗽反射がなくなるため,よりいっそう誤嚥に留意が必要となる。
□随伴症状の出現の有無を継続観察する。
□嘔気・嘔吐の持続時には積極的に制吐薬を投与する。投与薬剤と方法にはメトクロプラミドの静脈内投与,ドンペリドンの坐薬,および両者の経口投与があり,病態に応じて投与方法を考慮する。
□脱水・ショックの徴候がある場合は静脈路を確保し輸液を行う。
□背景因子,随伴症状,身体診察などの情報収集を行い,鑑別を考える。
□様々な疾患の随伴症状として嘔気・嘔吐は常に起こりうるので,起こったときの対処法を事前に想定しておく。
□まず考えるのは,①治療のスピードが生命予後を変える疾患,②治療のスピードにより機能予後が変わったり侵襲的処置が必要となったりする疾患である。特に,出血や阻血(臓器虚血)が関与する病態は治療緊急性が高い。
□幅広い鑑別が必要であり,系統的にVINDICATE-Pで鑑別を考える(表2)。
□随伴症状,バイタルサインを組み合わせることで,鑑別を絞り込むことができる。
□絞り込んだ鑑別の中から,可能性が高いもの,および致死的で否定が必要なものについては積極的に検査を行ってよい。
□生理検査:12誘導心電図。
□画像検査:腹部超音波,心臓超音波,胸部X線,頭部CT,腹部CTなどがある。
□血液検査:血液ガス分析(+乳酸),心筋マーカー,血算,生化学などがある。
□その他:尿検査,髄液検査などがある。
□バイタルサインの安定と自力歩行の確認をしてから帰宅させる。自力歩行や立位保持が困難な場合,小脳梗塞,脳幹梗塞なども考える。
□女性,高齢者,糖尿病既往で,胸痛の随伴がなく,嘔気のみで来院する急性冠症候群がいることに注意する。
□下痢がないのに嘔気・嘔吐のみで安易に感染性胃腸炎と診断すると,重症疾患を見逃すことがある。特に感染性胃腸炎の流行期には注意する。
□メトクロプラミド投与で錐体外路症状が出現することがあるので,投与中,投与後は観察が必要である。
1) 日本救急医学会 専門医認定委員会, 編:救急診療指針. 改訂第4版. 日本救急医学会, 監.へるす出版, 2011, p331-2.
2) Tintinalli J, et al:Tintinalli's Emergency Medicine: A Comprehensive Study Guide, 8th ed. McGraw-Hill Education, 2015, p489-92.
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