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【識者の眼】「ゼロピックスをめざして〜筋トレブーム」中西信人

中西信人 (神戸大学大学院医学研究科外科系講座災害・救急医学分野)

登録日: 2025-03-19

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最近はまさに筋トレブームですね。街の至る所に会員制のジムを見かけます。薬局に行けばプロテインコーナーもあります。筋肉を売りにした芸能人も大人気です。そして2023年には厚生労働省が「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」において、成人および高齢者に、週2〜3日の筋トレを実施することを推奨するまでに至りました。はたして筋トレはそんなに重要なのでしょうか。

私の専門の救急集中治療の分野から「筋肉の重要性」をみていきます。病気や事故を問わず、重篤な状態になったときに筋肉のある患者さんのほうが生存率が高くなり、身体機能の低下も軽減されると報告されております1)。病気になったときに筋肉のある方のほうが免疫力が高く、さらに筋肉は体のエネルギー源として病気と戦うのにも役に立つのです。そのため筋肉のある患者のほうが長期的な身体機能障害であるPICSになる可能性も低くなるのです。

やはり日常の筋トレは重要であると言えます。誰もが明日、重篤な状態になってしまう可能性があります。そういった状態を乗り切っていくために、日常の筋トレが欠かせません。筋トレといっても会員制のジムに通わないといけないわけではありません。結局そういったところは通うのが面倒になり、契約しても行かない人は行きません。

継続できる筋トレをするためにはどうしたらよいのでしょうか。まずは簡単に家でできる腕立て伏せや腹筋、スクワットから始めたらよいと思います。しかし、これもまたなかなか続きません。筋トレを継続するためには、生活の一部にするのがよいと考えます。たとえば、エレベーターを使用せず、階段を使うことも立派な筋トレです。洋式トイレを使用せず和式トイレで座り込むことも、家族の重い荷物運びの手伝いをすることも筋トレなのです。

PICSのない社会、ゼロピックスをめざすためには、日常の筋トレがとても重要になります。日々の生活の中に筋トレを取り入れることで、ゼロピックスへ一歩近づくことになります。

【文献】

1) Jaitovich A, et al:Crit Care. 2020;24(1):566.

中西信人(神戸大学大学院医学研究科外科系講座災害・救急医学分野)[救急医学][PICSゼロピックス

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