株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「ゼロピックスをめざして〜重症患者リハビリテーションガイドライン」中西信人

中西信人 (神戸大学大学院医学研究科外科系講座災害・救急医学分野)

登録日: 2025-04-28

最終更新日: 2025-04-23

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2023年に日本集中治療医学会を中心として『重症患者リハビリテーションガイドライン』が発表されました。ガイドラインでは、ICUに入室するような重症患者のリハビリテーションをどのようにすすめていくか、最新のエビデンスがまとめられております。筆者も、ガイドライン作成メンバーとして関わりました。

そもそも、病気で重症な状態にある患者が、ICUからリハビリをする必要があるのでしょうか。ベッド上で寝ていてはダメなのでしょうか。答えは早期のリハビリは必須です。もちろん、無理やりリハビリをさせるわけではありません。ICUに入室する重症患者は、炎症のために異化が強く、1日に約2%の筋肉が萎縮していきます。そのため、急性期から安全に効率的にリハビリをすすめていく必要があるのです。

2022年にNew England Journal of Medicineから、teamsトライアルの結果が報告されました。この研究では、早期リハビリの効果が検証されましたが、早すぎるリハビリは予後を改善させないばかりか、バイタルサインの変化など有害事象も引き起こすことがわかりました。そのため、急性期のリハビリに関わるすべての職種の方が、早期リハビリについて理解する必要があります。

『重症患者リハビリテーションガイドライン』では、早期リハビリ開始基準、中止基準についてまとまっております。さらに、どのようなリハビリを1日に何回実施すべきかなどがまとめられております。成人のみでなく小児のリハビリについても掲載され、ガイドラインを理解することが安全で効率的なリハビリへとつながります。

また、ガイドラインでは、嚥下リハビリについても触れられています。重症患者の半数以上に嚥下機能障害があると言われ、嚥下機能障害をどのように評価して、どのようにリハビリをすすめていくのかもまとめられております。リハビリというと腕や足のイメージがありますが、嚥下機能の回復も非常に重要なリハビリです。

退院後の社会復帰、つまりゼロピックスをめざすには、ICU入室後すぐにエビデンスに基づいた安全で効率的なリハビリを開始していく必要があるのです。皆で勉強してゼロピックスをめざしましょう。

中西信人(神戸大学大学院医学研究科外科系講座災害・救急医学分野)[救急医学][PICSゼロピックス

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top