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腸管出血性大腸菌感染症

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
大西 真 (国立感染症研究所細菌第一部部長)
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  • ■疾患メモ

    ベロ毒素(志賀毒素)を産生する大腸菌を原因とする。激しい腹痛,出血性腸炎の腸管症状を特徴とする。

    有症状者の約5%程度は,溶血性貧血,血小板減少,急性腎傷害を3主徴とする溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome;HUS)を併発する。一部には脳症を発症し,死に至る。

    国内においては血清群O157に属する大腸菌が約60%を占めるが,O26,O103,O111,O121,O145,O165などが重症例の原因となる。

    感染症法の3類感染症で,診断した医師は届出が必要である。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    水様便から始まり,激しい腹痛,血性下痢。大腸炎。

    発熱は伴わないことが多いとされるが,重症の場合は発熱もみられる。

    下痢発症から3~10日の消化器症状が軽減する頃,HUSを発症することがある。

    HUS発症と相前後して脳症を合併することがある。脳症の症状としては痙攣と意識障害が高頻度にみられる。

    ごく軽い腸管症状を示すのみのもの,あるいは無症状者も存在する。

    【検査所見】

    糞便からの志賀毒素産生性大腸菌の検出。O157群以外のO群(たとえばO26,O103,O111,O121,O145,O165)の腸管出血性大腸菌も存在することを考慮して検査を進める必要がある。必ずしも分離は容易ではない。

    便中のベロ毒素の検出。

    腹部超音波検査による,大腸の腸管壁の肥厚は診断の補助となる。

    白血球数増加,CRP高値などの炎症反応が顕著な場合は,HUSの発症の危険因子となる。

    HUSの3主徴に関する検査所見。破砕状赤血球を伴う貧血でHb10g/dL未満(溶血性貧血)。溶血性貧血によるLDHの上昇,ハプトグロブリンの低下,ビリルビン上昇を伴うが,クームス試験は陰性。血小板減少。急性腎傷害の関連する検査値として,血清クレアチニン値の上昇,尿量,蛋白尿,血尿。

    脳症を疑った場合(痙攣または意識障害が生じた場合)は,頭部画像検査と脳波検査を行う。

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