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薬物依存

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
松本俊彦 (国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長)
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  • ■疾患メモ

    わが国で最も多い乱用薬物は,戦後から70年間一貫して覚せい剤である。

    覚せい剤取締法事犯者の再犯率がきわめて高いのは,刑罰だけでは薬物依存(substance dependence)という医学的障害から回復できないことを意味している。

    近年では,危険ドラッグ,睡眠薬,抗不安薬といった,取り締まりにくい薬物の乱用も増加している。

    わが国には,薬物依存の専門医療機関がわずかしかないが,最近数年のうちに,通院プログラムを実施する施設(医療機関や精神保健福祉センター)が増加しつつある。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    診断に重要なのは以下の主要症状であるが,薬物依存患者の多くは副次的症状に列挙した特徴を持つ言動をとる傾向がある。なお,覚せい剤や危険ドラッグの急性中毒症状として幻覚・妄想を呈する患者がいるが,これはあくまでも薬物誘発性精神病性障害の症状であり,薬物依存の重症度とは必ずしも関係しない。

    〈主要症状〉

    薬物を使うことが仕事や学業,家事,心身の健康などにマイナスをもたらしていることを理解していながらも,薬物使用をやめることができない。

    自分なりに薬物をやめよう,あるいは薬物の使用頻度や使用量を減らそうとしては失敗する,というパターンを繰り返している。

    ひとたび薬物に対する強烈な渇望を自覚すると,その渇望を制御できなくなってしまう。

    〈副次的症状〉

    周囲の者から薬物使用について忠告されると,不機嫌になったり攻撃的な態度で反論したりする。あるいは,薬物使用によって生じている様々な問題を矮小化してとらえ,むきになって問題がないことを主張する。

    薬物使用のことを隠す・嘘をつく,あるいは使用量や使用頻度を過少申告するなど,本人が薬物使用に罪悪感を覚えていることをうかがわせる態度がみられる。

    【検査所見】

    薬物依存の診断の決め手となるような医学的検査はない。したがって,診断に際しては,上述した症状にみられるような薬物使用パターンの有無を確認する必要がある。

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