不登校(non-attendance at school)は診断名ではなく,文部省(当時)が「何らかの心理的,情緒的,身体的,あるいは社会的要因・背景により,児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあること」と定義した用語である(1998)。「病気や経済的理由以外で年間30日以上学校を欠席している状態」とされるが,実臨床では日数にかかわらず登校しづらい状況に対応する。
不登校の初期には身体症状を訴えて医療機関を受診することが多い1)。頭痛,腹痛,悪心などが多く2),登校前に増悪するが欠席が決まると改善するなど,状況によって症状が変動する。一般的な診察と器質的疾患の除外を行った後,Bio-Psycho-Socialに情報収集して以下の有無を評価する。
①身体面:機能性疾患(起立性調節障害,過敏性腸症候群,機能性頭痛など)
②発達面:神経発達症(自閉スペクトラム症,知的能力症,限局性学習症など)
③精神面:分離不安,恐怖,強迫,意欲の低下,睡眠の問題など精神疾患に伴う症状
④環境面:家族の不和,病気,ネグレクトなど。学校でのいじめ,先生や友達との不和など
①は天候や月経,疲労などに伴い悪化する。②は幼少期から集団生活や学業の困難さを認める場合と,担任が変わるなど環境変化で気づかれる場合とがある。③は低年齢では分離不安や給食など特定の状況への恐怖が多く,年齢が上がると学業不振や成人とほぼ同様の精神症状を呈するようになる。家族を避ける・整容が保てないなどの場合,精神疾患に留意する。④は本人が恥ずかしい,心配をかけたくないと思って語らないことがある。子どもと個別に話をするなどの工夫を行う。
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