編: | 古川俊行(浅草病院内科部長) |
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判型: | A5判 |
頁数: | 204頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2024年03月22日 |
ISBN: | 978-4-7849-0518-8 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
◆救急外来および一般外来を訪れる失神患者を診る上で,診断からマネジメントまで押さえておくべき事項を網羅的に解説。
◆失神診療に力を入れているエキスパートが執筆し,プロならではの診療の考え方・コツをまとめました。
◆2・3章の診断治療に関する項目では,冒頭に失神診療の重要点(失神らしさの吟味,鑑別,危険な徴候)をまとめ,実際の診療手順をStepにわけて詳細に解説。コンパクトながらも充実した知識が詰まった頼れる1冊です。
◆本書を読み通すことで,診療のレベルアップが叶い,失神患者に自信をもって対応できるようになります。
1章 失神とは
1 失神の定義と疫学
2 失神診療におけるガイドライン
3 意識消失の原因となる疾患
4 失神のリスク層別化
2章 失神の診断
1 外来に失神患者が来たら
2 救急に失神患者が来たら
3 失神患者の身体所見
4 失神患者の採血検査
5 失神患者の心電図診断
6 失神とその他の意識消失発作(てんかん等)の鑑別
7 失神患者の心エコー図検査
8 失神患者に対する画像検査(心臓CT,心臓MRI)
9 失神患者に対する起立試験・チルト試験
10 失神患者の心電図モニター
11 失神患者に対する心臓電気生理学的検査
3章 失神のマネージメント(疾患別)
1 起立性低血圧の診断と治療
2 反射性失神の診断と治療
3 失神患者の器質的心疾患に対する診断と治療
4 失神患者の虚血性心疾患と肺血栓塞栓症に対する診断と治療
5 不整脈失神の治療 (カテーテルアブレーション)
6 不整脈失神の治療 (デバイス)
7 遺伝性不整脈の診断と治療
4章 失神診療におけるトピックス
1 失神の診療と漢方薬
2 失神外来の現状・問題点
3 失神外来を始めてみて
4 COVID-19 後遺症による自律神経障害
序文
夏目漱石の『夢十夜』の中にこんな表現がある。「あの通りの眉や鼻が木の中に埋まっているのを,鑿と槌の力で掘り出すまでだ。まるで土の中から石を掘り出すようなものだからけっして間違うはずはない。」これは運慶が仏像を彫る姿に感心している主人公に「若い男」が言った言葉である。「失神診療とは何だろう?」と思ったときにこの表現を思い出した。失神の原因や診療の道筋は受診時にははっきりしないだけで,木の中に埋まっている。埋まっている仁王(原因や診療の道筋)を「鑿(知識)」と「槌(経験)」で掘り出していくということが失神診療ではないかと考えた。
本書の制作にあたり,失神診療に積極的に力を入れている先生をはじめ,検査や治療の専門家に執筆をお願いしており,各項目において専門的な知見を掲載している。本書で得られた「鑿」に臨床で得られる「槌」を使い,運慶が彫刻を彫るがごとく診療を進めて頂ければ幸いである。
ただ,原因不明の失神では短期間で目に見えるような結果が出ないこともある。診断から治療に進み,最終的に患者のQuality of Lifeの向上まで長い期間を要し,発作がおさまるまで付き合う必要もある。さらに,失神診療はまだわかっていない点が多くある。運慶のように思うような眉や鼻が作れなくても,令和の木に必ず埋まっている仁王が出てくるまで,診断や治療を見直しつつ,積んである薪を片っ端から彫っていくことも,百合の花が咲くまで100年待つということも必要である。行先のわからない船でも,飛び降りずに本書を参考に患者と乗り続けて頂きたい。
最後になりますが,執筆頂いた先生方,本書の企画から編集・出版までご尽力頂いた日本医事新報社の方々に心から御礼申し上げます。
2024年2月
浅草病院内科部長 古川俊行