編著: | 生坂政臣(千葉大学医学部附属病院総合診療部教授) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 232頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2010年10月10日 |
ISBN: | 978-4-7849-5429-2 |
版数: | 第3版 |
付録: | - |
大好評だった本書第2版の内容をブラッシュアップ!新たな3症例とコラムが加わり、総論も改訂。 お待ちかねの増補改訂版!合理的な「診断推論」に基づく、正診率の高い外来診療をめざす方にお勧めです。24症例の外来カンファレンスの紙上再現により、診療場面での「診断推論」の実践的・具体的活用法が学べます。この一冊を読むと、確実に診療の質が違ってきます。
レベルアップのために知っておきたい「外来診断学」
「外来診断学」─合理的な診断推論に基づく正診率の高い外来診療をめざして
外来と病棟での診断プロセスの違い
病歴診断の重用性
病棟研修中にできる外来トレーニング
疾患を想起できるかどうかが鍵
診断推論の2つのパート
診断推論の3つの流れ
(1)即座に疾患を思いつく場合
(2)疾患は想起されるが確信がない場合
(3)疾患を想起できない場合
まとめ
診断推論のキーワード 1 ヒューリスティックバイアス heuristic bias
診断推論のキーワード 2 臨床判断学 clinical decision making
診断推論のキーワード 3 セマンティック・クオリファイアー semantic qualifier
外来カンファレンスで学ぶ診断推論
カルテ01 19歳・女性「気持ちが悪く,下腹と腰が重い感じですが…」
鑑別で忘れちゃ困るこの疾患!
カルテ02 61歳・女性「吐き気と頭痛があり,冷や汗が出て…」
達人コラム─その1 一般外来での病歴聴取と身体診察の時間配分は?
使える! 問診のためのキーワード 汗の鑑別診断
カルテ03 63歳・女性「右肩と首が痛い,あと頭痛も…」
カルテ04 48歳・女性「疲労感があって,息切れするのですが…」
カルテ05 71歳・男性「薬が切れると熱が上がり,頭痛もある…」
カルテ06 63歳・男性「テニスの最中にめまい,その後に嘔吐も…」
カルテ07 62歳・男性「3日前からめまいがあり,右腹部痛と腰痛も…」
めざせ! ワンランク上の身体診察─その1 腹膜刺激症状の検出には反跳圧痛より打診法のほうが正確
カルテ08 62歳・男性「嘔吐・腹痛で胆石と診断されたのですが…」
カルテ09 29歳・女性「腰と背中と右脇腹の痛みが治まらない…」
めざせ! ワンランク上の身体診察─その2 Murphy徴候とCarnett徴候
カルテ10 81歳・女性「飲んだ薬がのどにつかえて,水を飲んでも取れない…」
カルテ11 20歳・女性「前日夜に右腹部から背中が痛み出し,発熱も…」
めざせ! ワンランク上の身体診察─その3 CVA叩打痛(CVA knock pain)診察のコツ
カルテ12 70歳・男性「高熱解熱後も微熱,寝汗,食欲不振が続く…」
達人コラム─その2 総合医のピットフォール
カルテ13 57歳・男性「右手指先から痛み出し,腕全体がこわばって…」
カルテ14 24歳・女性「のどが痛いが,いつもの風邪と痛み方が違う…」
カルテ15 27歳・女性「微熱が続いていて,首や肩が痛い…」
カルテ16 17歳・女性「10日ほど前から左眼が見えにくくなった…」
カルテ17 45歳・女性「足の潰瘍が治らない…」
カルテ18 53歳・男性「指が腫れてきて痛い…」
達人コラム─その3 X線写真の読影と外来診断の暗黙知
カルテ19 62歳・男性「食後に耐え難い頭痛が…」
カルテ20 39歳・女性「胃が痛くて目が覚めた…」
カルテ21 78歳・男性「食事が摂れず意味不明の言動もみられてきた…」
達人コラム─その4 感度・特異度のピットフォール
カルテ22 68歳・女性「めまいがひどく,吐き気・頭痛もする…」
カルテ23 79歳・男性「夜中に夢の内容を現実と思って行動する…」
カルテ24 29歳・男性「5日前から不眠で一睡もできない…」
達人コラム─その5 専門医が束になっても勝てない? ジェネラリストの切り札“比較診断”
索引
近年、卒前・卒後教育にて診断推論の重要性が認識されるようになってきたのは大変喜ばしい。
診断推論は医療という不確実な世界での問題解決に挑戦する医師には専門分野によらず有用なスキルであるが、医療の入り口を担当するジェネラリストにとっては必要不可欠であり、またその専門性を最も発揮できる領域である。
ただし、診断推論学のエキスパートになっても、実際に診断できるようになるわけではない。当たり前の話であるが、その疾患が何であるのかという各論を知っておく必要がある。精通したある領域の高い診断能力を、未知の領域で発揮することはできないのである。診断学の研修で重要なのは、診断がつく場所で研修することに尽きる。優れた指導医がいるに越したことはないが、診断がつかなかった患者を再診や紹介でフォローし、最終的にどうなったのかを自ら追跡する姿勢も大切である。
我々の教室では診断のつかなかったケースをXファイルというカテゴリーで蓄積し、電話連絡などで定期的に経過を追っている。初診外来に特化した部門でも、このような患者と共闘する姿勢が原因不明と診断された患者に幾ばくかの安心を与え、いつの日にか病態が判明するかもしれないという希望をも共有できる。
第3版では総論部分を書き改め、コラムと若干の症例を追加した。診断推論の疑似体験を通して、読者の疾患各論のレパートリーをひとつでも増やすお手伝いができたとすれば、著者としてこれに勝る喜びはない。
2010年9月
生坂政臣