著: | 徳田安春(地域医療機能推進機構(JCHO)研修センター長・総合診療教育チームリーダー) |
---|---|
判型: | 四六判 |
頁数: | 132頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2014年08月28日 |
ISBN: | 978-4-7849-4339-5 |
版数: | 第1版 |
付録: | - |
●カリスマ総合診療医・徳田先生がフィジカルの楽しさと重要性を伝授!
序 章──全身ゲシュタルト外観
各 論
1.全 身
●1 脱水の身体所見
●2 皮膚のフィジカル診断
2.心 臓
●3 心音:Ⅰ音(S1)
●4 心音:Ⅱ音(S2)
●5 心音:Ⅲ音(S3)
●6 心音:Ⅳ音(S4)
●7 大動脈弁狭窄症
●8 大動脈弁閉鎖不全症
●9 僧房弁閉鎖不全症
●10 僧帽弁狭窄症(mitral stenosis;MS)
3. 呼 吸
●11 呼吸器系診察の基本と正常呼吸音
●12 呼吸副雑音(1)─ 断続性副雑音
●13 呼吸副雑音(2)─ 連続性副雑音
●14 胸水と気胸
4.腹 部
●15 腹部の診断 ─ 視診
●16 腹部の診断 ─ 聴診・打診
●17 腹痛患者の触診
●18 直腸診
5.神 経
●19 脳神経の診察
●20 筋力の診断
●21 反射の診断
フィジカル診断はアートである.楽器や絵画,小説,演劇のようにアートの習熟には長年の経験と鍛錬が必須である.フィジカル診断について考えるとき,沖縄県立中部病院で内科チーフレジデントとして業務をこなしていた1991年を思い出す.そのときに,米国セントルイスから彗星のように登場されたのがSapira先生であった.チーフレジデントの業務の一つが,外国人指導医の案内役であった.すでに腎臓内科への針路を固めていた筆者にとっては,これで内科は「修了」できるという気持ちでSapira先生をお迎えした.
ところが,である.Sapira先生の医療面接,身体診察,臨床推論,Sapira先生のベッドサイドの動きのすべてが自分の眼にはすばらしく新鮮に映った.Pit recovery time計測や手背静脈圧による静脈圧測定,mounting signなどのフィジカル手技をそのとき初めて教わった感動はいまだに忘れられない.その後,沖縄県立八重山病院に異動した翌年にもSapira先生は来てくれた.沖縄民謡料理屋に案内すると,沖縄三味線(さんしん)の音色を聴かれるやいなや,その調律について何時間も語っていた.その語り口はまさにアーティストだった.そう,フィジカルはアートなのだ.こうして与那国島の観光も終えて,石垣島で再度民謡料理屋にお供したときSapira先生は与那国馬の美しさについての話を続けていた.その観察力の鋭さに感嘆した.
フィジカル診断で最も重要なのは観察力であると信じる筆者は,本書を通じてフィジカル診断の重要性と楽しさを体験して頂けたらと願う次第である.日本医事新報社出版局の皆さんには前著のバイタルサイン講座に引き続き本書でも大変お世話になった.その後に進路を総合内科に変更した筆者は卒後26年目で本書を出すにあたり,またclinical medicineを勉強することができたことは間違いない.「内科」の勉強はまだまだ修了していないのである.
2014年 盛夏 著 者