日本慢性期医療協会は9日、定例会見を開いた。江澤和彦常任理事(介護医療院協会前会長)は、市町村の介護保険財源の圧迫を理由に、医療療養病床から介護医療院へ転換しにくくなっている状況を問題視。「(転換によって)トータルでみれば社会保障費は抑制される。何らかの支援が必要」との考えを示した。
介護医療院は、今年4月に創設された介護保険施設。長期的な医療と介護のニーズを併せ持つ要介護者を対象とし、「日常的な医学管理」「看取りやターミナルケア」等の医療機能と「生活施設」としての機能を兼ね備えている。
厚生労働省はこのほど、介護医療院の開設状況(6月末時点)を公表。介護療養病床(病院)から621床、介護療養型老人保健施設から629床の転換があった一方で、医療療養病床からの転換は116床にとどまっていた。
江澤氏は、医療療養病床から介護医療院に転換した場合、介護保険の保険者である市町村の財源に大きく影響することを指摘。「市町村財源への影響や住民の介護保険料の増加を懸念し、市町村が医療療養病床からの転換にストップをかけている事例がある」と問題視した。
江澤氏は、同日の理事会で介護医療院の理念が了承されたことも報告した。理念には「利用者の尊厳の保障を最大の使命」と明記。「自律支援施設」「入所・在宅療養施設」「生活施設」「地域貢献施設」を掲げている。江澤氏は、「介護医療院になった瞬間、提供サービスに変化が起きるわけではないと認識している。目指すべき姿に向け、継続的に努力する必要がある」と述べた。
なお、江澤氏は6月より日本医師会の常任理事となったことから会長を辞任。同日の理事会で、副会長への就任が議決された。新会長には鈴木龍太氏(鶴巻温泉病院院長)が就任した。
会見ではこのほか、老健を運営している会員150施設を対象として7月に実施したアンケート調査の結果を発表した。調査結果によると、2015年度と稼働率を比較した場合、約4割の施設で「低くなっている」と回答。5年前と直近の決算期の収支を比較すると、悪化している施設が半数近くを占めた。自由記載では、老健から他の施設への転換を希望する声が複数あったという。
武久洋三会長は、「都会や病院併設の老健は何とかなるが、地方の過疎地にある単独老健は非常に困っている」と問題視。ロケーションを理由に運営が厳しくなっているのは制度の問題だとして、3年後の介護報酬改定で改善する必要性を訴えた。
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