【根本治療薬は2020年以降に認可されるのか】
アルツハイマー型認知症の治療薬として,1997年に米国でドネペジルが発売され,4種類の症状改善薬が処方可能となった。しかし,依然として根本治療薬は開発途上にある。
アルツハイマー病神経病理(Aβやタウ蛋白)を標的とした薬剤による臨床試験が行われてきたが,認知症レベル,すなわち自立生活が困難な患者を対象とした試験では有効性が得られず,現在は,治療対象を無症状ではあるがバイオマーカーが陽性のプレクリニカル期または軽度認知障害の患者とすることに移行しつつある。
プレクリニカル期にアルツハイマー病を診断するにはバイオマーカーが必要であり,脳脊髄液バイオマーカーやアミロイドPET,開発途上のタウPET1)の他,侵襲性の低い血液マーカーによるスクリーニング法が注目を浴びている2)。過去の多くの臨床試験は,患者組み入れ基準にこれらの客観的バイオマーカーを用いておらず,アルツハイマー病以外の認知症患者が混在したことで正確な効果判定に至らなかった可能性も指摘されている。
臨床試験の主要評価項目は認知機能と日常生活機能であるが,現在はバイオマーカーの変化も重要な評価対象であり,既に脳内Aβを減らす薬剤も出されている。早期介入で臨床症状改善効果が得られるか,現在進行中の数種治験薬のphaseⅢの結果は2020年以降に発表される予定である3)。
【文献】
1) Villemagne VL, et al:Nat Rev Neurol. 2018;14 (4):225-36.
2) Nakamura A, et al:Nature. 2018;554(7691): 249-54.
3) Cummings J, et al:Alzheimers Dement(N Y). 2018;4:195-214.
【解説】
石木愛子 東北大学加齢医学研究所老年医学