厚生労働省の上手な医療のかかり方を広めるための懇談会は17日、「『いのちをまもり、医療をまもる』国民プロジェクト宣言!」を公表した。医療現場の危機の共有など5つの方策の実施を提案し、来年以降も進捗を確認するとしている。
同懇談会では、超過労働が医師の希死念慮や抑うつ状態、睡眠不足、ヒヤリ・ハットを引き起こしているとして危惧。“医療危機”を乗り越えるため、医療の恩恵を被るすべての人が考え、参加し、行動すべきだと強調した。
5つの方策は、①患者・家族の不安を解消する取組の実施、②医療現場の危機を国民に共有、③緊急時の相談電話やサイトの導入・周知・活用、④信頼できる見やすい医療情報の提供、⑤チーム医療の徹底と患者・家族の相談体制の確立―。
宣言では、医療危機の4つの要因として、市民、行政、医師・医療提供者、民間企業それぞれの意識を問題視。医師・医療提供者側の要因としては、「医師が一番」という構造・意識の蔓延、医師がすべてを担うべきという医師自身の思い込み、男性中心の働き方や慣習による限られた人材への業務負担を挙げた。その上で、「あらゆる機会に医療のかかり方を啓発する(待合室、健診、公開講座)」「タスクシフト・タスクシェア(業務の移管・共同化)を推進する」「管理者は働き方改革に真摯に取り組み、地域医療の継続にも貢献する」「医療従事者も患者の安全のため、健康管理に努め、きちんと休暇をとる」などの取り組みを求めた。
構成員でアーティストのデーモン閣下は「懇談会は今日が最終回だが、ゴールではない。むしろスタートだ」との認識を示し、コンサートや講演会、エッセイの執筆などで、医療危機を周知することに意欲を見せた。
宣言を踏まえ、医師の新谷正義厚労政務官は、「厚労省として地域医療構想や医師偏在対策などによる医療提供体制の改革に努める」と強調し、「速やかに具体的施策に着手したい」と述べた。