診療報酬調査専門組織の入院医療等の調査・評価分科会は10月3日、「地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料(以下、地ケア入院料)」や「療養病棟入院基本料」などについて審議した。このうち「地ケア入院料」では、DPC対象の一般病棟から患者が移行する場合に、移行先が別病棟か同一病棟かで算定入院料が異なる点などを多くの委員が問題視。取り扱いを統一するべきとの意見が相次いだ。次回16日は、厚生労働省がこれまでの議論を整理した案を提出する予定。
DPC対象の一般病棟から患者が地ケア病棟・病室に移る際、①移行先が別病棟(地ケア病棟や療養病棟にある地ケア病室など)の場合は、「地ケア入院料」や「急性期患者支援病床初期加算」を算定するが、リハビリテーションは入院料に包括されるため算定不可、②同一病棟内の地ケア病室への転室は、入院料は引き続きDPC/PDPSで算定、リハビリは出来高で別途算定できるが、「急性期患者支援病床初期加算」は算定不可−と、移行先によって診療報酬上の扱いが異なる。
この点について松本義幸委員(健康保険組合連合会参与)は、「施設基準が同じなのに入院料や加算の扱いが異なるのはいかがなものか」と問題提起。神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)もこれに賛同し、「同じサービスは1つの価格にするべきだ」と述べた。
地ケア病棟を巡っては、これまでの分科会の議論で、入棟患者の43.5%を自院の一般病床からの転棟患者が占める現状を、地域包括ケアシステムの要として急性期治療終了後の患者(ポストアキュート)のみならず、在宅療養患者の急変時の受け入れ(サブアキュート)や在宅復帰支援を担うとされた、本来の役割を果たしていないのではないかと、疑問視する声が出ていた。このため厚労省は同日の分科会に追加資料を提出。それによると、自院の一般病床からの入棟患者割合は許可病床数400床以上の病院で、自宅等からの入棟患者割合は200床未満の病院で、それぞれ最も高いことが明らかになった。
病床規模が大きいほど、自院の一般病床からの入棟割合が高くなる点について、松本委員は、「地方で他に施設がない場合は止むを得ないが、もう少し機能分化を進めてほしい」と要請。池端幸彦委員(医療法人池慶会理事長)も、「200床未満は在宅療養支援病院、初診料の加算(機能強化加算)も取れる地域包括ケアの本家本元。400床以上で自院のポストアキュートが多くなるのは止むを得ず、同じ地域包括ケアであっても2種類あると思う。その点を中医協でよく議論していただきたい」と述べた。
同日の分科会には、下部組織であるDPC/PDPS等作業グループが行った分析も報告された。同グループは、DPC/PDPSに馴染まない可能性がある、医療資源投入量や在院日数がDPC対象病院の平均からかけ離れた病院について、DPCから退出させることも視野に分析を進めてきたが、20年度改定での対応は見送り、次年度以降も検証を継続する考えを示した。
具体的には、①医療資源投入量が少なく、急性心筋梗塞、脳梗塞、狭心症、心不全症例のうち「手術なし」かつ「手術・処置等1なし」の症例が占める割合が高い、②在院日数が短く、自院他病棟への転棟割合が高い─のいずれかに該当する病院を対象に、書面調査やヒアリングを実施する。DPC対象病院の診療の標準化を進める観点から、各施設に対して、▽医療資源投入量▽在院日数▽転棟した症例の占める割合▽「手術なし」かつ「手術・処置等1なし」の症例が占める割合―の4指標について、DPC対象病院全体の中での自院の位置付けを個別に知らせる試みの実施も提案した。