No.5000 (2020年02月22日発行) P.28
小井土 雄一 (国立病院機構災害医療センター臨床研究部長)
登録日: 2020-02-24
昨年は年号が代わり令和となった。平成は多くの災害に見舞われた。1995(平成7)年の阪神淡路大震災に始まり、新潟県中越地震、東日本大震災、2016(平成28)年熊本地震、北海道胆振東部地震と震度7の地震が連続した。また、地震のみならず、2014(平成26)年広島豪雨災害から、連続して気象災害にも見舞われている。一方で、本邦の災害医療は平成30年間で飛躍的に発展した。DMAT(災害派遣医療チーム)や災害拠点病院の設置、広域災害救急情報システムなどは、世界に誇る仕組みとなった。しかしながら、多くの災害を経験すれば、その都度新しい課題が生じるものである。令和の災害医療のキーワードは、災害関連死、多職種連携、地域包括BCP(事業継続計画)、気象災害対応ではないかと考える。
災害関連死を防ぐためには、保健と医療の一元化が必須である。発災直後から災害時公衆衛生の立ち上げ、災害時要配慮者への対応が重要となる。災害関連死に関しては、東日本大震災で既に3700人を超え、2016(平成28)年熊本地震では、直接死の数倍の200人以上が災害関連死と認定されている。東日本大震災の教訓を受けて、熊本地震では、組織的な公衆衛生活動、災害時要配慮者への対応がなされたが、この領域に関しては、改善の余地が大きい。
さらに必要なのは、多職種連携による地域包括BCPと考える。保健医療対応すべき被災者は、医療施設だけでなく、避難所、仮設住宅、福祉介護施設等に存在する。平時から地域包括ケアネットなどを基盤として災害時要配慮者に対する災害時対応を決めておくべきである。平成の時代は病院BCP策定であったが、令和はさらに一歩進んで、地域包括BCPを考えるべきである。
令和の災害医療のもう一つの課題は、気象災害である。平成の時代は、地震災害に軸足を置いた災害医療が構築されてきたが、昨今では世界的に気象災害が増加しており、わが国も例外でなく毎年のように洪水、台風等の気象災害が発生している。気象災害が地震災害と異なるのは、ある程度予測できることである。予測できるということは、準備する期間があるということである。令和の時代では、今後も毎年のように気象災害に見舞われる可能性が高い。近年の気象災害では、停電、断水のインフラ災害により入院患者の継続診療ができなくなり、避難搬送を強いられるケースが起きている。これらのインフラ災害に対して、病院、地域がいかなる対策を行うかが喫緊の課題である。
小井土 雄一(国立病院機構災害医療センター臨床研究部長)[災害医療]