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【識者の眼】「介護保険制度のゆがみ浮き彫りに」東 憲太郎

No.5000 (2020年02月22日発行) P.16

東 憲太郎 (公益社団法人全国老人保健施設協会会長)

登録日: 2020-02-25

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この度、日本医事新報から突然の執筆依頼があり驚いている。私も医師ではあるが、全国老人保健施設協会の会長であり、依頼文書に記載されていた「医学・医療界でご活躍…」などしていないからである。執筆テーマのカテゴリーの例示を見ても、全て医療関連であり、介護に関するテーマは見当たらない。一時はお断りしようかとも思ったが、医学・医療界の方々に、日頃あまり関心がないであろう「介護」のことを、少しでも多く理解していただけたらと思い、お引き受けすることにした。介護保険制度に関すること、医療と介護の連携に関すること等々を書いていくことにする。

今回はまず、介護保険制度の成り立ちについて少し述べてみたい。御存知のこととは思うが、1997年に「介護保険法」が制定され、2000年から介護保険制度が施行されることとなった。そして言うまでもないが、介護保険の基本理念は「自立支援」である。介護保険制度の持続性等、各論は後に述べるとして、ここでは基本理念たる自立支援について考えてみたい。

世界保健機関(WHO)は2001年、国際生活機能分類(ICF)という全く新しい考え方を提唱した。それ以前は、国際障害分類(ICIDH)という障害の程度を測る分類が主流であった。ICFは、障害があっても残っている機能を測定しようという考え方なので、ICIDHとは180度異なるものである。そして残念ながら、わが国の介護保険は2001年にICFが提唱される以前に作られたため、能力サポート型の自立支援ではなく、障害穴うめ型の自立支援となっている。したがって要介護度を決める際も、「手のかかり度」をタイムスタディーで検証しているのである。今どれだけの能力があって何ができるかではなく、今何をしてあげなければならないのか、という基準で決定されている。

もちろんわが国の介護保険制度は素晴らしいものではあるが、施行後20年近く経過し、穴うめ型であることによる制度の歪みや問題が、浮き彫りになってきている。

東 憲太郎(公益社団法人全国老人保健施設協会会長)[介護]

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