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【識者の眼】「新型コロナウイルス感染症:皮膚感染症から考える流行収束への道」大塚篤司

No.5003 (2020年03月14日発行) P.63

大塚篤司 (京都大学医学部外胚葉性疾患創薬医学講座特定准教授)

登録日: 2020-03-03

最終更新日: 2020-03-03

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が大きな問題となっていますが、皮膚科領域でも感染症の流行がしばしば問題となります。代表的なものとしてトンズランス感染症があります。トンズランスは真菌の一種で、正式名称はトリコフィトン・トンズランス。このトリコフィトン属は白癬菌属というもので、水虫が同じ仲間に分類されます。トンズランスは、白癬菌(水虫菌と言い換えてもいいかもしれませんが)の中で、柔道やレスリング選手を中心に広がった感染症です。

トンズランスは10年以上前から、注意喚起されていました。私が皮膚科医になった2003年頃、高校生の柔道選手のフケと抜け毛が問題となりました。実はこれはトンズランス感染症で、体が擦れ合う格闘技選手同士でカビを移し合っていることがわかりました。この菌は頭に感染するとかゆみだけでなく脱毛を伴います。ただ、専門家以外は診断をつけることができず、病気が拡大してしまいました。さらに、脂漏性皮膚炎などの頭部湿疹と誤診してしまったケースも有り、感染が拡大しました。湿疹と誤診した結果、ステロイド外用剤を使用してトンズランス感染症が悪化したケースもあります。トンズランス感染症は診断さえつけば、抗真菌剤で治療が可能です。専門家の中で知識が共有され、柔道やレスリングをしている一般の方に病気の啓蒙をすることで流行は収まりました。

新型コロナウイルス感染症では、感染症を専門としない医師がマスコミに出演し、間違った情報やデマ、そして陰謀論を語ることで一般の方の不安を増長させています。こういう時こそ、私たち医師はEBMをもとに、論文から正しい情報を読み取り、一般の方に啓蒙していくことが大切ではないかと思っています。

大塚篤司(京都大学医学部外胚葉性疾患創薬医学講座特定准教授)[新型コロナウイルス感染症]

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