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【識者の眼】「濃厚接触者の定義の変更と保健師向けの積極的疫学調査のガイドの発行」和田耕治

No.5010 (2020年05月02日発行) P.60

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2020-04-23

最終更新日: 2020-04-23

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4月20日に国立感染症研究所の新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領が改訂されました。大事な変更がありますので、まずは結論を先にお伝えします。

1. これからは、発症の2日前から、目安として1m以内にマスクなしで15分以上会話をするなどの接触をした人が濃厚接触者に該当します(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)。

2. そのため、今後は誰もが感染していると思って、1m以上(できれば2m)あけて話す必要があります。

3. つまり、分かりやすく言い換えると、お互いのいずれかがマスクなしで、1m以内で15分以上話していた場合、その後どちらかが2日以内に感染した場合は「濃厚接触者」になりえるということです。

4. 以上より、会話の際には普段からマスクをする、できれば2mの距離をあけることが大事です。流行は年単位ですので、新しい習慣として定着させてください。

5. 会話をする際に飛沫を飛ばさないためのマスクはガーゼマスクでも良いでしょうし、また、マスクがない場合には、ハンカチや、スカーフ、バンダナなども最悪の対応として米国CDCは紹介しています。

こうしたことを踏まえて外来などにおいて、発熱などの症状がない患者に対しても、対策の検討が必要です。外来での座席の配置、換気のあり方も含めて考える必要があります。

もう一つご紹介したいのは、この改訂にあわせて、保健師さんが保健所で行う積極的疫学調査のガイドを作成したことです(「保健師のための積極的疫学調査ガイド[新型コロナウイルス感染症]」https://jeaweb.jp/covid/links/guide_0421.pdf)。保健師さんのために、と書いてありますが、クラスター対策にも使えます。起きてほしくはないのですが、院内感染などが発生した場合に保健所がどのような調査をするかも理解できます。ぜひ、担当者の方は一読ください。

【文献】

1) 新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2020年4月20日暫定版)

  [https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9357-2019-ncov-02.html

【一部抜粋】

●「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」の感染可能期間に接触した者のうち、次の範囲に該当する者である。

 ・患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者

 ・適切な感染防護なしに患者(確定例)を診察、看護もしくは介護していた者

 ・患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者

 ・その他:手で触れることの出来る距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と15分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)

●「患者(確定例)の感染可能期間」とは、発熱及び咳・呼吸困難などの急性の呼吸器症状を含めた新型コロナウイルス感染症を疑う症状を呈した2日前から隔離開始までの間、とする

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症 ]

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