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【識者の眼】「スマホの中の記憶」関なおみ

関なおみ (国立感染症研究所感染症危機管理研究センター危機管理総括研究官)

登録日: 2024-11-06

最終更新日: 2024-11-06

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スマートフォンの普及で、誰もが何時でも何処でも写真を撮ることができるようになった。わざわざ写真屋さんに行って現像してもらったり、写真をアルバムに貼りつけて整理したりするといった手間もなくなった。その分、気軽に様々な画像が日々撮影され、保存され続けている。クラウド型の大容量ストレージを契約していれば、ほぼ無限に一生分の写真や動画を保存し続けることだって可能だろう。

先日、研修に使えそうな写真はないかとアルバムフォルダの中をスクロールしていると、もはやすっかり忘れていたコロナ渦中の場面に遭遇した。突如あらゆる場所に出現した、三密回避を奨励するポスターや立て看板、各々が手づくりのカラフルな布マスクをした集合写真、ステイホーム中のオンライン飲み会の動画、ひとっこひとりいない観光地、アクリル板が整然と立ち並ぶ事務室内、高騰した不織布マスクや迅速検査キットの値札、予防効果をうたった様々な珍商品、迷商品等。写真や動画だけでなく、ネットニュースやSNSの投稿をスクリーンショットで保存している人もいるかもしれない。

今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る事態は、「行政文書の管理に関するガイドライン」に規定する「歴史的緊急事態」に該当するとされ、関係する行政文書の保存のために取り組むべき内容が各行政機関へ通知されている。また、日本学術会議からも、COVID-19のパンデミックに起因する社会現象を記録する様々なモノを保全し、その展示を通じて、感染症への理解を深め、広く資料、記録、記憶を保全するための世論喚起が必要、といった提言が出されている。

現在、国立国会図書館ホームページには、大震災に関する記録や教訓を次の世代に伝えていくためにつくられた「ひなぎく」と呼ばれるアーカイブがあり、一般市民が投稿することも可能である。これと同じようなアーカイブをCOVID-19でもつくってみてはどうだろうか? そして、小学生がタイムカプセルを校庭に埋めるときのような気分で、自分だったら次の感染症危機発生に備えて、スマホの中のどの写真を未来に託すか、考えてみるのもよいかもしれない。

たまには断捨離ではなく、その反対の作業についても、頭を働かせてみる必要を感じる。

※本文は個人的な見解に基づく内容であり、組織の見解を代表するものではありません。

関なおみ(国立感染症研究所感染症危機管理研究センター危機管理総括研究官)[新型コロナウイルス感染症(COVID-19)][アーカイブ][感染症危機管理]

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