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【識者の眼】「子どもの体力・運動能力調査の結果から」鳥居 俊

No.5248 (2024年11月23日発行) P.65

鳥居 俊 (早稲田大学スポーツ科学学術院教授)

登録日: 2024-11-05

最終更新日: 2024-11-05

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スポーツの日(旧、体育の日)を前にスポーツ庁より令和5年度の体力・運動能力調査の結果が報道されました。子どもの体力・運動能力については平成年代を通じて低下、下げ止まり、などの表現により最も高かった1980年代と比べて低いことが報道されてきましたが、生活様式が変化した現代と40年前との比較をいつまでもしていることが重要かどうかはわかりません。

最近の傾向として、コロナ禍で子どもたちの運動時間が制限され、コロナ禍後も運動を多く実施する子どもの割合が特に女子で回復せず、また運動好きの子どもの割合も回復しないことが憂慮されていました。女子中学生で学校の体育以外の運動時間が1週間で「0分」という回答が約25%となったときは学校関係者、体育分野の専門家に衝撃が走りました。現在、その時期よりは改善していますが、人生の先で遭遇する骨粗鬆症の予防を考えると不安は続きます。

種目ごとに親世代、祖父母世代と比較した結果をみると、10歳の反復横跳びは現在が最も高値で、握力、50m走は親世代が最も高値、ボール投げは現在が最も低値となっていました。なお、身長は現在が最も高く、体重は親世代とあまり差がない数値でした。したがって、体格は3世代の中では身長で見る限り最も大きくなっているものの、体力・運動能力値が必ずしも親世代に及ばず、種目によっては祖父母世代より低いものもあるということになります。

現代の子どもたちは生活環境が親、祖父母世代とは異なり、歩行量などの身体活動量が少なくても日常生活が成り立つ状況で育ってきました。また、兄弟が少なく、少子化により遊ぶ友達も少ない状態で、都会では安全に自由に遊ぶことのできる場所も減り積極的に身体を動かす機会が減っています。そのためか、学校での骨折発生率は50年前に比べて数倍に上昇しています(ようやく最近は発生率の上昇が止まってきました)。

人生100年という時代になって、高齢期の運動器の機能低下は変形性関節症や骨粗鬆症、筋量減少(サルコペニア)となり、要支援・要介護の原因となることも知られています。医療・社会福祉費用を減らすという観点だけでなく、高齢期のQOLを保つためにも、子ども時代に身体を動かして強い運動器をつくることが望まれます。

【参考文献】

▶鳥居 俊:日小整外会誌. 2005;14(2):125-30.

鳥居 俊(早稲田大学スポーツ科学学術院教授)[体力・運動能力][人生100年]

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