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【識者の眼】「福祉の視点では『何もしない』も有効な選択肢」馬見塚統子

No.5011 (2020年05月09日発行) P.31

馬見塚統子 (社会医療法人財団大和会 東大和市高齢者ほっと支援センターなんがい管理者・社会福祉士)

登録日: 2020-05-08

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最近、SNSや本、テレビなどのメディアで「レンタルなんもしない人」という方の活躍をよく見かけます。個人としての特別な能力や価値を提供するのではなく、ただ一人分の存在だけが必要なシーンで利用可能というサービスで、何らかの理由で家族や友人に頼めない多様な用事がオファーされているようです。大変興味深いのは、非常に重い過去を持つ方が今まで誰にも話すことができなかった話をレンタルなんもしない人には話をしていることです。

社会福祉を学んでいた学生の頃に「社会福祉援助技術総論」という授業がありました。これは面接などの援助技術のことで、担当の先生が最初に「これからあなたたちは社会福祉の専門職になるために真摯に勉強して、クライエントを何かをしてあげたいという気持ちで仕事に臨むと思いますが、援助の中に『何もしない』という選択肢があることを覚えておいてください」と話をされました。その意味は、専門職は自分の専門性を発揮することが仕事だと思い込んでいますが、「何もしない」という選択肢を持っていないと、クライエントを尊重することよりも、自分自身のために仕事をしている状態に陥る危険性があるということです。

自身の業務=「診療報酬」に結びつく専門職であるとなかなか「何もしない」という選択肢はとりにくいものですが、これから85歳以上の高齢者の方々がクライエントの大多数を占める時代に、福祉分野の視点からは患者さんの話をきちんと聴いた上で、何もしないという選択肢が患者さん自身の力を引き出し、場面によっては有効であると感じています。

馬見塚統子(社会医療法人財団大和会 東大和市高齢者ほっと支援センターなんがい管理者・社会福祉士)[社会福祉援助技術]

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