私が栄養について考えるようになったのは、8年前に「NST=栄養サポートチーム」というものが話題になった頃である。
その当時は疑問にも思わず、高齢者が肺炎で入院した時には絶食の指示を出していた。ついさっきまで食べていた人が、誤嚥して肺炎になったからといって絶食にしていては、嚥下機能が低下している人は廃用が進み、ますます食べられなくしてしまう。入院したがために患者さんの食べる権利を奪うことになる。誤嚥性肺炎の最高の予防法は食べることである。食べるためには、誤嚥しても肺炎にならない口腔環境を作ることが重要である。
誤嚥性肺炎で入院したのち嚥下困難となり胃瘻を造設されて家に戻る人も少なくない。また、認知症の進行により食べなくなったために胃瘻を造設される人もいる。食べなくても生きていける「ヒト」がそこに生まれる。開業医となり訪問診療を開始してから、私の周りには「食べることは生きること」を支えるチームがいつの間にかできていた。杉浦医院では、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、看護師、ケアマネジャーらが連携して在宅型NSTで在宅患者さんを支えている。
残り696文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する