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【識者の眼】「アドボケイトとしての医療者」小橋孝介

No.5029 (2020年09月12日発行) P.60

小橋孝介 (松戸市立総合医療センター小児科副部長)

登録日: 2020-08-31

最終更新日: 2020-08-31

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私達医療者は、それぞれの立場でアドボケイトとしての役割を多かれ少なかれ求められる。アドボケイトとは、「自分で声を上げることのできない立場の人達の声を代弁するアドボカシーを行う人」という意味である。特に子ども家庭福祉の領域では、子ども達の声を聴き代弁者として問題解決にあたるアドボケイトの養成が求められている。アドボカシーは、国レベルの政策に関わる様なマクロ・レベルだけでなく、地域レベルのメゾ・レベル、個人や家族レベルのミクロ・レベルまで様々な段階で求められる1)

小児科専門医は医師像の1つとして子どもの代弁者であることを挙げ、アドボカシーとして「子どもに関する社会的な問題を認識できる」「子どもや家族の代弁者として問題解決にあたることができる」ことを到達目標としている。日本ではまだ海外のようにアドボカシー・トレーニングとして、その研修プログラムの中に独立したアドボケイトとしてのトレーニングを組み込むまでには至っていない2)

国立成育医療研究センター社会医学研究部・こころの診療部を中心とした研究者・医師有志による「コロナ×こどもアンケート」調査の第2回調査報告書が2020年8月18日公開された3)。この中で、新型コロナウイルス感染症の流行下で子ども達が「大人たちに伝えたいこと」の項目では、子ども達が声を届けてくれている。「こどもの気持ちをわかろうとしていないと思います」。子ども達の声は、聴こうとしなければ聴こえてこない。

アドボカシーに対する関心の低さ、子ども自身に対する権利教育(自由に意見を持ち、その意見を表明する権利など)の不足など社会全体がまだまだ未成熟である。

私達はアドボケイトとして子どもの声を聴くという意識を持ち、そして子ども達には声を上げる権利があるという事を伝えていかなくてはならない。

【文献】

1)Buchman S, et al:Can Fam Physician. 2016;62:15-8.

2)山岡祐衣:外来小児科. 2020;23:22-7.

3)コロナ×こども本部. [https://www.ncchd.go.jp/center/activity/covid19_kodomo/]

小橋孝介(松戸市立総合医療センター小児科副部長)[子ども虐待][子ども家庭福祉]アドボカシー新型コロナウイルス感染症

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