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【識者の眼】「特定看護師は在宅・慢性期医療で活躍すべきだ」武久洋三

No.5039 (2020年11月21日発行) P.58

武久洋三 (医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)

登録日: 2020-11-04

最終更新日: 2020-11-04

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「特定行為に係る看護師の研修制度」は、本来は医師しか行えない医療行為を、それぞれの特定行為研修を修了した看護師(以下、特定看護師)が医師の手順書に従って単独で実施できるものである。2015年に21区分38行為が設定され、現在、指定研修機関は222カ所(2020年8月現在)あり、特定看護師は近々3000人を超える予定であるが、2025年に向けての目標の10万人以上には程遠い。しかも在宅領域では7%しか対応できていないことが判明している。

現在、特定行為研修のうち「在宅・慢性期領域パッケージ」以外は急性期中心であり、特定看護師は主として急性期の現場での活躍を期待されているようで、指定研修機関も大学や急性期医療機関が多い。また2020年度診療報酬から、総合入院体制加算の施設基準に特定看護師の複数名配置が規定されたり、麻酔管理料(Ⅱ)における麻酔を担当する医師の一部の行為を特定看護師が実施しても算定できるようになったが、いずれも急性期医療の分野である。しかし現実に医師がいないところでこそ、その実力が発揮できるわけであり、急性期病棟では医師も多く、看護師も十分に配置されている。急性期であっても入院患者の約80%が高齢者であり、10日前後の入院期間で自宅等に退院している。その後の在宅への看護師による訪問ケアが特に重要であると考えられている。医師の関与が少ない在宅に特定看護師を投入することにより、日本の医療は飛躍的に向上するだろう。

特定看護師がその実力を十二分に発揮してもらう最適の領域は、在宅医療・慢性期医療である。特にこれからの日本は在宅医療の拡大を目指している。特定看護師が訪問看護に行けば、脱水症状に対する輸液による補正や褥瘡処置、インスリン投与量の調整等、重症の在宅患者にとって実際に必要な医療行為が特定看護師により行われることになる。看取りも含めて、現在は医師の対応が十分でない在宅領域の拡大は、患者本人のため、家族のため、医療費の効率化を考えても必須と思われる。特定看護師の在宅への貢献に診療報酬での評価が望まれる。

武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[在宅医療]

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