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【識者の眼】「新型コロナクラスター対応の現場」川村英樹

No.5069 (2021年06月19日発行) P.61

川村英樹 (鹿児島大学病院感染制御部特例准教授)

登録日: 2021-05-31

最終更新日: 2021-05-31

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新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は主に飛沫・接触経路で伝播するが、多くの事例では、感染者は周囲の人にほとんど感染させておらず、密閉・密集・密接の3密とよばれるような一部の環境で、小規模な患者集団(=クラスター)が発生し1)、さらに連続的・大規模な集団発生に繋がる。

クラスターが発生する場としては、接待を伴う飲食店やカラオケを伴う場所、職場会議などが挙げられる2)。クラスター対応では、保健所による積極的疫学調査に基づく感染源(持込症例)の推定と、曝露リスクのあった利用者等の濃厚接触者に対する検査・健康観察・行動制限などによる封じ込めが行われる3)。クラスター発生防止対策として有症状者は利用しないなどのウイルス持込対策のほか、マスクを着用する・十分な間隔をとる・換気をする・手指消毒を徹底する・長時間は利用しないなどの対策を行うが、これは発生場所だけでなく、同様の場所で推進することも重要である。

繁華街・職場・家庭等で感染者が増加した後、医療介護施設等の重症化リスクの高い施設へウイルスが持ち込まれ伝播していく。これら施設でのクラスター発生では、初期探知期には疫学調査によるリスクアセスメントと感染管理による拡大防止策を行い、拡大期になった場合は、さらにDMATなどの専門家の支援の下で施設機能維持や他施設との連携を併せて実施し、収束を図る必要がある4)

筆者はこの1年、医療介護施設や、本県特有の問題である離島クラスター対応を行政等とともに行ってきたが、その発生の背景に経済的困窮(接待を伴う飲食店従業者の集団生活など)や経済効率性(介護施設の人的不足など)といった社会脆弱性の存在もみえる。また、対応には様々な利害関係者が存在するため、時に衝突も生じる。しかし、今社会から求められているのは、関係者がクラスター収束や拡大・重症者発生防止という目的を共有し、各々の専門的知識・スキルを発揮して感染拡大の防止に取り組むことである。私自身は感染症専門家の一人として、できることを医療機関・地域で行っていきたいと考えている。

【文献】

1Oshitani H:Jpn J Infect Dis. 2020;73(6):491-3.

2)国立感染症研究所:クラスター事例集(2021年5月20日閲覧)

   [https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000654503.pdf] 

3)国立感染症研究所:新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2021年1月8日版).

   [https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/corona/COVID19-02-210108.pdf] 

4)国立感染症研究所:COVID-19医療施設内発生対応チェックリスト(2020年7月8日)

   [https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9735-covid19-21.html]

川村英樹(鹿児島大学病院感染制御部特例准教授)[新型コロナウイルス感染症][敗血症の最新トピックス⑰]

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