No.5083 (2021年09月25日発行) P.62
楠 隆 (龍谷大学農学部食品栄養学科小児保健栄養学研究室教授、滋賀県立小児保健医療センター小児科非常勤医師)
登録日: 2021-09-02
最終更新日: 2021-09-02
アレルゲン免疫療法(AIT)は、アレルギー疾患の原因であるアレルゲンを直接生体に投与することでアレルゲンに対する反応を減弱させ、疾患の進展を防ぐことを目的とするアレルゲン特異的な治療法です。従来は皮下免疫療法が主体であり、注射が必要なために患者や施行者の負担が大きかったのですが、舌下免疫療法はアレルゲンを舌下に投与するもので注射による痛みはなく、また自宅で行えるというメリットがあります。日本においては、季節性アレルギー性鼻炎(AR)であるスギ花粉症に対して2014年に、ダニによる通年性ARに対して2015年に、それぞれスギ花粉抗原とダニ抗原による舌下免疫療法が保険適用となりました。さらに2018年には小児に適応が拡大され、成人と同様の効果と安全性が確認されています1)。
近年の疫学研究によると、小児のARは喘息に先行することが多く喘息発症のリスクファクターとなるため、早期にAITを導入することで喘息発症の予防につながれば一石二鳥となることが期待できます。そして、実際にそのような予防効果の報告が蓄積されてきています。2017年の総説では、3年間のAITにより特に小児で有意な喘息発症予防効果が認められ、しかもその効果は治療終了後も2年間は認められた、とのことです2)。これらの結果を受けて、欧州アレルギー臨床免疫学会(EAACI)は花粉抗原による中等症〜重症ARの小児例に対してAR自体の治療効果のみならず喘息予防効果も期待してAITを実施することを推奨しています3)。
このような予防効果を期待するのであれば、まだAR症状やアレルゲン感作の程度が軽微な小児期早期に開始したほうがより効果的であろうと容易に想像されます4)。今後はAIT開始時期と喘息予防効果に関する検討もされていくと思われ、研究の発展が期待されます。
【文献】
1)湯田厚司, 他:アレルギー. 2021;70:186-94.
2)Kristiansen M, et al:Pediatr Allergy Immunol. 2017;28:18-29.
3)Halken S, et al:Pediatr Allergy Immunol. 2017;28:728-45.
4)Gradman J, et al:J Allergy Clin Immunol Pract. 2021;9:1813-7.
楠 隆(龍谷大学農学部食品栄養学科小児保健栄養学研究室教授、滋賀県立小児保健医療センター小児科非常勤医師)[アレルゲン免疫療法]