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【識者の眼】「職場や飲食の場面におけるアクリル板などの仕切りの意義」和田耕治

No.5083 (2021年09月25日発行) P.57

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2021-09-15

最終更新日: 2021-09-15

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職場や飲食の場面でアクリル板などの仕切り(以下、「仕切り」)が新型コロナの発生から多く見られるようになった。今後進められる飲食店に対する感染対策の認証制度でも仕切りの有無を問う項目があるが、再度、その意義について筆者の考えを示す。

なお、ここでいう仕切りとは、新型コロナの流行以降、職場や飲食店で設置されている、高さ1m以内で人と人との間に設置されているものである。空間を分離するような天井から床までに及ぶ仕切りは対象としない。

仕切りを設置する際には、感染対策としての目的(誰から誰の飛沫感染を予防するのか)とその期待される効果が得られるかの確認が必要である。

仕切りに期待される効果としては、会話により出る飛沫で比較的粒径の大きなもの(目安として5μm以上)を物理的に遮蔽することができる。会話では比較的粒径の小さいマイクロ飛沫が同時に発せられ、周囲へ浮遊する。エアコンの風の流れによって5〜7m程度まで室内に広がる可能性があるため、マイクロ飛沫に対する物理的遮蔽の効果は期待できない。

マイクロ飛沫の感染対策は適切な量の換気である。二酸化炭素モニターで1000ppm以下が一つの目安である。また仕切りを設置する際には換気を妨げないように空気の流れを確認する必要がある。

オフィスなどの机の場合、定常的に同じ人が座るような場面で、会話や食事がある場合には、職場内の話し合いで仕切りを設置することはありうる。正面のみとするか、横との設置を行うかは部屋の構造や換気、業務内容をもとに検討する。通常、マスク着用、黙食の徹底、相手との距離が2m程度、換気が確保されているのであれば、必ずしも仕切りは必須ではないとも考えられる。

飲食店では、同居家族などの間にテーブルに仕切りを置くことは飛沫感染対策としてはありうるが、そこだけ飛沫感染対策をしても、家庭内で接触したり車に同乗したりすると全体的な効果は限定的である。また、飲食店では、一緒に来た客の間だけでなく、一緒ではない客と客の間の感染対策についても検討する必要がある。一緒ではない客と客の間では2m程度の距離があれば、仕切りは必ずしも必要ではないが、店内の空気の流れを考慮して換気が十分になされているかが重要である。

仕切りを設置する際には、感染対策として期待される効果が得られているかを定期的に確認し、空調や換気が確保できているかを併せて検討いただきたい。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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