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【識者の眼】「補完代替療法に関する医師の対応パターンと失敗事例」大野 智

No.5085 (2021年10月09日発行) P.63

大野 智 (島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)

登録日: 2021-09-30

最終更新日: 2021-09-29

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この連載がきっかけか定かではないが補完代替療法を題材にしたコミュニケーションがテーマの学生主催の勉強会1)の講師を依頼された。患者から「健康食品を使ってみたい」と質問されたら、医療者はどのように対応したらよいのかを考えるものであった。その際、医師がとりがちなコミュニケーションのパターンと失敗事例を取り上げたので紹介したい。

■「ダメ、絶対!」

強い立場にある者が弱い立場にある者の利益のためだとして、本人の意思は問わずに介入・干渉・支援するパターナリズムに基づく対応である。しかし、患者の利益(好み・価値観)を一方的に決めつけてしまっていることはないであろうか?(※患者が補完代替療法に期待しているのは「精神的な希望」が最も多い)。また、補完代替療法=悪い事とのイメージが患者に植え付けられてしまうと、医師に相談なく黙って利用してしまう恐れもある。場合によっては、補完代替療法を利用した患者は自分自身もが否定されたと感じてしまうことにもつながりかねない。

■「どうぞ、ご自由に」

インフォームドコンセントにおける患者の自己決定権を重視する余り、「決めるのは患者であり、医師が決めてはいけない」と思い込んでいないだろうか。「パターナリズムからの反省」と言えば聞こえはいいが、行き過ぎた患者の自己責任論が医師の無責任につながっていないか注意したいところである。インフォームドコンセントは医師と患者との協働作業であることを忘れてはいけない。

■「標準治療がベストです」

「健康食品に関心を持つのは、患者に医学の知識が欠如しているからだ」「患者に正確な医療情報を提供すれば『健康食品を使いたい』などとは言わないはず」といった情報欠如モデルに基づく対応である。ただ補完代替療法への関心や利用の意思が変わらない場合、ともすると患者の自己責任論に陥りやすい。あるいは患者に意思決定能力がないと決めつけてしまいがちにもなる。なおサイエンス・コミュニケーションにおいて、単純な情報欠如モデルでは科学受容促進には至らないことが知られている(※情報提供そのものの重要性を否定しているわけではない)。

なお、筆者はどのように対応しているか、ご興味のある方は過去の記事(No.5053)をご参照いただきたい。

【文献】

1)患者さんとのコミュニケーションギャップを考える. [https://note.com/medstudent_comm/

大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法

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