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【識者の眼】「医療勤務環境改善支援センターの有効活用に向けて」小林利彦

No.5085 (2021年10月09日発行) P.64

小林利彦 (浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)

登録日: 2021-10-01

最終更新日: 2021-10-01

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医療従事者の離職防止や医療安全の確保等を図るために医療法が改正され、医療機関が勤務環境の改善に取り組むことが努力義務化されたのは2014年10月のことである。その折に、医療機関がPDCAサイクルを活用して計画的に医療従事者の勤務環境改善に取り組めるように、国は「勤務環境改善マネジメントシステム」を創設したものの、その周知等は未だ十分でない。また、国は各都道府県に、医療機関のニーズに応じた総合的・専門的な支援業務を担う部署として「医療勤務環境改善支援センター(以下、センター)」の設置を求めたが、全国での設置が完了したのは2017年3月のことであり、その組織形態も直営や委託など様々であったことから、責任の所在等がやや不明瞭なまま現在に至っている感がある。

各都道府県に設置されたセンターには医療労務管理アドバイザー(社会保険労務士等)と医業経営アドバイザー(医業経営コンサルタント等)が配置され、運営協議会等での議論や検討などを通じて、地域の医療機関や関係団体との連携ならびに諸活動の実践が求められている。しかし、前述したように、センターの組織構造が脆弱である都道府県も少なくなく、各アドバイザーが必ずしも常駐していないことや、アドバイザー間の連携や情報共有が十分でないこと、県の担当責任者の知識やスキル等が異動等で蓄積されていないことなどが垣間見られる。併せて、今回の感染症対応等で、各医療機関へのアドバイザー等の訪問支援に制限がかかっていることなども問題視されている。

しかしながら、多くの医療機関で医師の働き方改革への取り組みは急務な課題となっており、自施設だけでの対応がきわめて困難な状況下、センターへの期待感は大きなものがあると考える。その一方で、筆者自身、厚生労働省の委託事業等でセンターのアドバイザー向け研修会などによく関わっているが、各都道府県の担当者の意識の違いや知識・スキル等の温度差には驚かされる。いずれにせよ、2021年5月28日に公布された改正医療法を契機に、医師の労務管理面でのパラダイム転換が求められており、センターの更なる機能強化とともに、その有効活用が期待される。

小林利彦(浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)[医師の働き方改革]

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