国家戦略特区で最先端医療を提供する場合の病床特例が全国展開されることを受け、厚生労働省は10月4日の社会保障審議会医療部会に説明。がんの専門治療や救急医療といった特定の機能を担う病床については、病床過剰地域であっても新設や増床を認める医療法上の「特定病床の特例」の対象に、当該病床を追加する考えを示した。
医療法では、病床過剰地域における病床の新設、増床は原則、認められていない。だが、政府は、最先端医療を提供する世界トップクラスの「国際医療拠点」の形成を目指し、2014年に、国家戦略特区において総理大臣が認定した最先端医療を提供する場合は、病床過剰地域であっても病床の設置を許可する特例措置(特区病床特例)を創設。これまでに10事業所が認定されている。さらに、今年6月に閣議決定した成長戦略フォローアップでは、特区病床特例の全国展開について、「21年度中に検討し、結論を得る」との方針を打ち出している。
一方、医療法においても、がんの専門治療や救急医療、治験のための病床など、医療法施行規則(省令)で定める13の特定の病床に該当する場合には、病床過剰地域であっても、国との協議を経て病床の新設・増床を許可する特例措置(特定病床の特例)が存在する。
このため厚労省は、政府の全国展開の方針を受けた対応策として、既存の「特定病床の特例」の対象に、最先端医療を提供する病床(世界最高水準の高度の医療であって、国内においてもその普及が十分でないものを提供する機能に係る病床)を追加することを、この日の医療部会に提案。その運用に際しては、▶最先端医療の対象については、関係学会の推薦を得たものであって保険収載されていないものなど、基準を明確化する、▶特定病床の特例の適用に一定の期限を設け、期限経過後は、特例の適用を受けない場合の病床数への変更を求めるなど、地域での効率的な医療提供体制の構築を前提とした対応を行う―ことを併せて示した。
委員からは、制度の公正・中立的な運営を担保するため、特例の対象となる「最先端医療」の選定について、学会推薦だけでなく、第三者的な審査機関の設置や、日本医学会による追加承認などを求める意見があった。また、特例の適用期間では、対象となる医療がある程度普及した段階で、特例の適用から外すべきだとの意見が大勢を占めた。
今後、政府の国家戦略特区ワーキンググループで検討が加えられた後、再度、医療部会で議論し、年度内に具体的方向性を決める予定。なお、特定病床の対象に追加するためには、省令改正が必要になる。