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【識者の眼】「日本人の協調性こそファクターX」神野正博

No.5090 (2021年11月13日発行) P.56

神野正博 (社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)

登録日: 2021-10-29

最終更新日: 2021-10-29

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新型コロナウイルス感染症の第5波は急速に消滅しようとしている(10月末現在)。その理由として、ワクチン接種者があっという間に米国や英国を凌ぐ数となったことが挙げられる。しかし、それだけではワクチン接種者が多い国の感染者数と整合性がとれない。どうも昨年暮れから取りざたされたファクターXと言われる、何か見えない日本特有の理由がありそうだ。

そこに、日本人が持つ、よく言えば仲間意識、協調、悪く言えば他人を気にする意識があるのかもしれない。もともとハグや握手をしない、家に入る時には靴を脱ぐなどの日本の生活様式に加えて、日本人のコミュニケーションでは口を見て話すことはないのでマスクへの抵抗感もない。おそらく、ほぼ全国民が協調して文句も言わずマスクをし、検温や手指消毒など感染対策をまじめに実行する国は他にないかもしれない。

10月5日、2021年ノーベル物理学賞を受賞した米国プリンストン大学上席研究員の真鍋淑郎氏は、国籍を変更した理由について、「日本の人々は、いつもお互いのことを気にしている。調和を重んじる関係性を築くから」と述べ、「アメリカでは、他人の気持ちを気にする必要がありません。私も他人の気持ちを傷つけたくはありませんが、私は他の人のことを気にすることが得意ではない」「私はまわりと協調して生きることができない。それが日本に帰りたくない理由の一つです」とした。

一方、第100代の内閣総理大臣に就任した岸田文雄氏は10月8日の所信表明演説で、「早く行きたければ一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」とのアフリカのことわざを引用し、「分断から協調へ」の理念を強い口調でアピールした。

まさに両氏の発言は日本人が持つ協調性を再確認させるものだ。この協調性がコロナに打ち勝つ武器となったのではないだろうか。

神野正博(社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)[新型コロナウイルス感染症]

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