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【識者の眼】「男女共同参画と働き方改革」野村幸世

No.5095 (2021年12月18日発行) P.56

野村幸世 (東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)

登録日: 2021-12-02

最終更新日: 2021-12-02

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男女共同参画が叫ばれて久しいが、最近になり、やっと、本腰を入れて男女共同参画を考える学会も増えてきた。喜ばしいことである。一方、厚労省からは働き方改革が謳われ、医師にも働き方改革が迫られ、労働環境改善委員会などの名称の委員会が設置された学会も多い。

昨今、働き方改革が実現すれば、男女共同参画の問題は解決する、という意見を耳にする。なんとも、浅薄な知識に基づいた発言としか思えない。男女共同参画がなかなか実現できない理由のひとつに、医師の長時間労働や予定外の呼び出しなどがあることは事実である。しかし、男女共同参画実現に対して、働き方改革はほんの一部に過ぎない。「ガラスの天井」という言葉で有名である。これは、資質・実績があっても女性やマイノリティを一定の職位以上には昇進させようとしない組織内の障壁を指す言葉である。また、「アンコンシャス・バイアス」という言葉も知られており、自分自身が気づかずに持つ偏った見方・考え方を指す。これは自覚もないので厄介である。つまり、男女共同参画へは働き方改革よりも、人間の意識のほうが重要なのである。人間の意識を変えることに労力が必要なのである。

このなかなか変わらない人間の意識をなんとかするために、ポジティブアクションがあり、集団の意識を変えるために、マイノリティを上位のポジションにつける必要があるのだ。しかし、このポジティブアクションにも注意が必要なことは言うまでもない。今まで、十分に人の上に立つことの意味を学ばずにきた者がポジティブアクションで上に立つと、自分がマイノリティを代表してそのポストにあることを意識せず、自分の考えのみで行動することがあるからである。これにより、せっかくの今までの進歩が後退することすら起こりうる。さらに、それでうまくいかない場合には、ポジティブアクションの短所のみが前面に出る。

ポジティブアクションは推奨するが、その場合の人選にも熟慮が必要と思う。

野村幸世(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)[ポジティブアクション]

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