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【識者の眼】「敗血症の診断と治療」松田直之

No.5095 (2021年12月18日発行) P.62

松田直之 (名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野 教授)

登録日: 2021-12-02

最終更新日: 2021-12-02

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新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)およびその感染症COVID-19が世界的パンデミックとして猛威をふるい、2年が経過しようとしている。COVID-19を経験する中で、敗血症といえども病原微生物が異なれば感染症としての症状も異なることや、臓器障害の表現型も異なることを経験する。

敗血症は、2016年に公表されたSepsis-31)より、「感染症あるいは感染症が疑われる状態で臓器不全が進行する状態」として定義されるようになった。この臓器不全の進行の評価として、外来や病棟ではquick SOFA(qSOFA)スコア2)(意識変容、呼吸数≧22回/分、収縮期血圧≦100mmHg)を用いている。qSOFAは、感染症における院内死亡を予測するスコアとして、2016年に公表されている。qSOFAの3項目のうち2項目以上満たす場合に、敗血症を疑い、集中治療室への入室や入院を検討する状況にある。

一方、今回のCOVID-19や、現在の脅威である新興インフルエンザなどのウイルス感染症において、qSOFAが死亡や臓器障害進行を予測できるかどうかは定かでない。qSOFAは、主な対象を細菌感染症として構築された院内死亡の予測スコアであり、ウイルス感染症を対象として構築されたものではない。私たちにはCOVID-19の死因を解析するとともに、COVID-19診療データベースから、初期の臨床症状と院内死亡を紐付ける新たなスコアリングシステムを開発することが期待されている。

日本版敗血症診療ガイドライン20203)では、敗血症の初期診断としてqSOFAの使用を推奨した。しかし、敗血症診断におけるqSOFAの特異度は高いものの、敗血症を拾い上げる感度が低いことが知られてきた。敗血症の診療においては、感染症であることを疑う熱型、理学所見、検査所見などに加えて、罹患の可能性のある微生物の特徴も考慮することが必要と考えている。敗血症の早期発見と早期治療に努めたい。

【文献】

1)Singer M, et al:JAMA. 2016;315(8):801-10.

2)Seymour CW, et al:JAMA. 2016;315(8):762-74.

3)日本版敗血症診療ガイドライン2020. [https://www.jsicm.org/pdf/jjsicm28Suppl.pdf]   

松田直之(名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野 教授)[新型コロナウイルス感染症][敗血症の最新トピックス

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