No.5100 (2022年01月22日発行) P.59
山本晴義 (労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)
登録日: 2021-12-28
最終更新日: 2021-12-28
やる気がでないことは往々にしてある。自分自身に関しても、どうやったらやる気が出るのか悩んだことがある。“やる気スイッチ”はどこにあるのか、といった相談も受けることがあるが、そもそも、“やる気スイッチ”は存在しない。
そのことを前提にやる気が出なくても、物事を進められる方法についてお話したい。1つの方法としては、まず、開始の時間を決めることが大切である。開始時間を決めて、タイマーをかけ、時間になったらいやでもなんでも、まず1分だけでもやってみることである。何でもそうだが、新しく何か行動をすることにはエネルギーが必要である。そのエネルギーを出すのが大変なので人は、今やっている行動を続けることを選ぶ。これを利用すれば、ひとたび新しい行動を始めれば、1分でやめることはあまりない。嫌なことであっても、今の行動を維持しようとする人間の性質で続けることができるのである。切り替えが悪く、勉強がなかなか始められないお子さんにはこのような方法をお勧めする。
また、次のやる気につなげるための方法としては、きりが悪いところで切り上げることも有効である。テレビドラマ等を見るとわかるが、きりが悪く、もっと見たい、次が気になるところで終わりになるようにつくられている。「あー、いいところだったのに」と思うと同時に、「早く続きがみたい、このあとが気になる」とも思うだろう。皆さんの多くは、勉強でも仕事でも、きりが良いところまで行い、一息つくのではないだろうか。しかし、そのあと、次の作業に移ろうとすると、あまりやる気が出ないということがあると思う。これは次の作業をやるために一度切らしてしまった集中力、そしてやる気を再度出さなければならないからである。そこで、わざときりの悪いところで作業を中断すると、途中でやめてしまって何か気持ちが悪いという言葉にできない思いを払拭しようと体が勝手に机に向かうようになる。こうした人の特性を活かすことが物事を進めやすくするポイントである。
山本晴義(労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)[メンタルヘルス ]