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【識者の眼】「研修医の働き方改革①」西﨑祐史

No.5102 (2022年02月05日発行) P.62

西﨑祐史 (順天堂大学医学部医学教育研究室先任准教授)

登録日: 2022-01-19

最終更新日: 2022-01-19

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2024年4月より、医師の時間外労働を原則的に年960時間かつ月100時間までとする基準(A水準)が設けられることとなった。ただし、地域医療や救急体制の維持に関わる医療機関(B水準)や、研修医(C-1水準)、高度技能の育成が公益上必要な分野について特定の医療機関で診療に従事する場合(C-2水準)に関しては年1860時間かつ月100時間までの時間外労働が許容された。研修医の労働条件に関しては、長時間労働がバーンアウト等のメンタルヘルスに関連しているとの報告があり、C-1水準を許容すべきかについては議論の余地がある。

そこで、我々研究グループ※1は、NPO法人日本医療教育プログラム推進機構(JAMEP)※2が開発した、基本的臨床能力評価試験(GM-ITE)※2の結果を活用し、研修医の至適労働時間を検討した。

本研究は、日本全国の初期臨床研修医約5500名を対象とした横断研究である。研究の結果、基本的臨床能力開発の観点からは、研修医の至適労働時間は、週平均60〜65時間(年平均時間外労働時間としては960〜1200時間)である可能性が示された。このことから、研修効果を最大化する観点からC-1水準の時間外労働時間の上限年1860時間は、今後減少させるのが適当であると思われた。また、各研修プログラムについては、研修医の時間外労働の上限を年960〜1200時間になるように内容を構成することが、研修医にとって教育と健康のバランスの観点から適切である可能性が示された1)2)

※1厚労科研研究班について
厚生労働省 厚生労働科学研究費補助金等(地域医療基盤開発推進研究事業)
JAMEP基本的臨床能力評価試験(General Medicine In-Training Examination:GM-ITE)質向上についての研究。研究代表者:西﨑祐史(順天堂大学先任准教授)

※2「JAMEP」および「基本的臨床能力評価試験(GM-ITE)」について3)4)
2005年9月にNPO法人日本医療教育プログラム推進機構(Japan Institute for Advancement of Medical Education Program:JAMEP)が設立された。JAMEPは基本的臨床能力の客観的な評価指標として「基本的臨床能力評価試験(GM-ITE)」を開発した。GM-ITEは、初期臨床研修医を対象とした「In-Training Exam」であり、2011年度(第1回)より導入され、2020年度(第10回)には593病院、7669名が受験するほどの規模に拡大した。問題は「医療面接・プロフェッショナリズム」、「症候学・臨床推論」、「身体診察法・臨床手技」、「疾病各論」の4分野で構成されており、幅広い疾患領域(内科・外科・小児科・産婦人科・精神科等)が網羅されている。

【文献】

1)[https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34818129/

2)[https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000693035.pdf

3)[https://jamep.or.jp/exam/

4)[https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34675616/

西﨑祐史(順天堂大学医学部医学教育研究室先任准教授)[研修医][働き方改革]総合診療

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