No.5117 (2022年05月21日発行) P.69
本田秀夫 (信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授)
登録日: 2022-05-06
最終更新日: 2022-05-06
2022年度診療報酬改定で、通院・在宅精神療法の児童思春期精神科専門管理加算の見直しが行われたことを、前回(No.5109)述べた。この加算は、特定機能病院または児童・思春期精神科入院医療管理料に係る届出を行った保険医療機関等に対して適用される。
「届出を行った保健医療機関等」については、「20歳未満の精神疾患を有する患者の診療を行うにつき相当の実績を有している保険医療機関であること」として、厚生労働省から以下のような施設基準が示されている(H30 保医発0305第3号)。
①精神保健指定医に指定後5年以上にわたって主として20歳未満の患者に対する精神医療に従事した経験を有する専任の常勤精神保健指定医が1名以上勤務していること。②その他に主として20歳未満の患者に対する精神医療に従事した経験1年以上を含む精神科の経験3年以上の専任の常勤精神科医が1名以上勤務していること(①、②の「常勤1名」の部分は「週3日以上、週24時間以上の非常勤精神科医2名」でも可)。③20歳未満の患者に対する当該療法に専任の精神保健福祉士又は公認心理師が1名以上配置されていること。④過去6カ月間に当該療法を実施した16歳未満の患者の数が月平均40人以上であること。⑤診療所の場合は過去6カ月間に当該療法を実施した患者のうち50%以上が16歳未満の者であること。
今回の診療報酬改定では、加算自体の見直しはあったものの、施設基準の見直しは行われていない。専門性を保証するために施設基準を設けることに異論はないが、現状では課題があるように思う。中でも⑤は、神経発達症を良心的に診療している診療所がむしろ基準を満たしにくくなってしまう。神経発達症を専門とする診療所の中には、児童期から成人期まで縦断的に診療する方式をとっているところがある。受診する側からみると一貫性があり安心である。しかし、長く診療しているうちに担当するケースがどんどん年齢を重ねるため、⑤の施設基準を満たさないという診療所の例を見聞している。
神経発達症を診療する医師の不足は今も深刻である。神経発達症は児童思春期にとどまらず、すべてのライフステージにまたがって医療ニーズが存在する。縦断的に診療しようとする児童精神科医や、16歳未満でも積極的に診療しようとする精神科医が安心して診療にあたることができるよう施設基準に関する見直しも検討すべきと思われる。
本田秀夫(信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授)[診療報酬改定][児童思春期精神科]