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次期日医会長選に松本吉郎常任理事が出馬─「失った信頼を取り戻す」【まとめてみました】

No.5119 (2022年06月04日発行) P.14

登録日: 2022-06-01

最終更新日: 2022-06-01

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日本医師会の会長選が6月25日の定例代議員会で行われる。当初再選を目指していた中川俊男会長が急遽出馬を断念、松本吉郎常任理事(埼玉)と松原謙二副会長(大阪)が立候補している。松本氏は東北、関東甲信越、中部、九州ブロックから推薦を得ており、当選が濃厚な状況だ。

中川会長は2006年から日医常任理事、2010年から日医副会長を5期務め、2020年6月の会長選では5選を目指す現職の横倉義武氏を破って当選。日医役員歴は16年にわたり、新型コロナウイルスの感染拡大後は、会長としてメディアを通じて医療者の立場から感染対策の徹底を強く国民に呼びかけるなど積極的に情報発信を行ってきたが、まん延防止等重点措置が発令されていた2021年4月に日本医師連盟の組織内議員である自見はなこ参院議員の政治資金パーティーに発起人として参加したことが報じられ、批判を浴びた。

2022年度診療報酬改定も「中川離れ」の要因の1つとなった。最終的に診療報酬の改定率は「本体プラス0.43%」で決着したが、問題は財務相と厚労相の閣僚折衝で合意したリフィル処方箋の導入だった。リフィル処方箋は再診料の算定回数減少に直結する。かねて日医が強硬に反対してきた制度が事前の根回しなしに強硬に導入されたことで、中川会長の政治手腕に不安が広がったと見られる。

中川会長は5月初旬、再選に向け出馬する意向を表明していたが、7月に自見議員の参議院議員選挙、2年後には診療報酬や介護報酬など“トリプル改定”が控える中、会内で対抗馬を立てる動きが顕在化。東京都医の尾﨑治夫会長から「選挙をしている場合ではない」との声が上がるなど、本格選挙を回避すべきとの気運も高まり、中川氏は立候補を断念した。現職が2期目の会長選に立候補しないのは異例だが、日医の分断を防ぐことを優先した形となった。

副会長候補は猪口、茂松、角田氏

松本氏は5月24日、都内で記者会見を開き、日医会長選出馬に当たり、「日本医師会が地域医師会とともに一丸となり、国民や医師から信頼される医師会になるように努めることが求められている。その期待に応えられるように、誠心誠意努めていく」と決意を表明した。

会見には、副会長候補の猪口雄二氏(日医副会長、全日本病院協会会長)、茂松茂人氏(大阪府医会長)、角田徹氏(東京都医副会長)、常任理事候補の釜萢敏氏(日医常任理事)も同席した。

松本氏は決意表明の中で、「4月末くらいから全国の多くの会員から会長選出馬を促され、熟慮の末、立候補を決意した」と理由を説明。①地域から中央へ、②国民の信頼を得られる医師会に、③医師の期待に応えられる医師会に、④一致団結する強い医師会に─を4本柱として医師会運営に当たる考えを示した。


風通しのよい日医に

会見の中で松本氏が強調したのは、「失った信頼の回復」だ。新型コロナウイルスの感染拡大で医療界が混乱に陥る中、「国民とのコミュニケーションがうまく機能しなかった部分があった」と指摘。「医師会の会員だけではなく、国民、政界や財界など社会的にも(日医の)信頼がなくなってきているのではないかという声がある中で、この信頼を取り戻さなければいけない時期に来ていると考えた」と述べ、信頼を取り戻すには日医を風通しの良い組織にし、地域医師会との連携をより強いものにしていく必要性があると強調した。

中川会長については、「非常に勉強もよくされ、強い会長だったと思う。非常に指導力もあり、正しい知見をお持ちだと今でも思っており、尊敬している」とした上で、「日医会内の運営などが実際に十分に回っていたかというと、『それはどうなのかな』とも感じていたので、そのことも踏まえて出馬を決意した」と述べた。

松原謙二副会長も会長選に出馬

松本氏当選の流れが強まる中、日医の松原謙二副会長も会長選への立候補を決めた。松原氏は大阪府医所属の内科医で2012年から日医副会長を務めており、現在5期目。所属する大阪府医が推薦する松本氏との一騎打ちとなる見込みだ。このほか副会長候補に現職の今村聡氏が立候補。会長、副会長の座を巡り、現執行部が選挙戦を繰り広げることになった。

立候補は6月4日まで受け付け。25日の定例代議員会で、各都道府県医師会から会員数に応じて選出された代議員(376人)による投票が行われ、新会長が選出される。

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