No.5137 (2022年10月08日発行) P.62
薬師寺泰匡 (薬師寺慈恵病院院長)
登録日: 2022-09-27
最終更新日: 2022-09-27
救急外来に限らず、待ち時間の発生は多くの患者にとって大きなストレスとなる。当院ではどうしても院内で発熱患者の導線を分けておくことができず、発熱患者は院外の駐車場で待機してもらっているが、先日も待ち時間に耐えられず、勝手に院内に侵入してくるということがあった。救急外来では予約をとることも難しく、実際の待ち時間を短くする努力と、待ち時間を感じさせない努力も必要となる。
待ち時間を感じさせない努力として、待ち時間の目安表示、整理券の配布、頻回の声かけ、音楽によるストレス軽減など、種々の方法が考えられる。テーマパークは先陣を切ってこの問題解決に動いた団体である。ディズニーランドやユニバーサルスタジオでは、待ち時間にアニメーション動画などを流し、アトラクションを楽しむための背景知識や、安全上の注意点を効果的に伝えている。待つ側も「何回同じもん見せるねん」と思いつつも、何度も同じ動画を見ているので、待ち時間の間にきちんと学習が終わっており、キャストの説明がスムーズに耳に入ってくるのである。オミクロン変異体対応型のワクチン接種が始まるが、これを機に注意点をまとめた動画を作成して外来で流しておくのも良いのではないかと思わせられる。
待ち時間と音楽の関係については様々研究されており、救急外来の待合で音楽を流すと不安解消につながることは知られている1)。ただ、実際の待った感覚を減らせるか、待ち時間による精神的ストレスを軽減できるか、という点はわからない。研究のデザイン上どうしてもアンケートベースになってしまうが、評価の尺度をうまく設定できれば、問題解決への道筋が見えるかもしれない。
これから冬になり、インフルエンザとコロナの両方の流行が起こると、極端な長時間の待ち時間発生も考えられる。医療リソースは限られており、待合に音楽を流すというのは簡単にできる対策かもしれない。しかし、いざ何を流すかと考えると難しい。どんな種別、ジャンルの音楽が良いのかという点も重要な視点である。テンポの遅い曲より、速い曲を聞いていたほうが体感経過時間は短くなるという指摘もあり、参考になりそうである2)。
【文献】
1)Holm L, et al:Pediatr Emerg Care. 2008;24(12):836-8.
2)松田 憲, 他:日本感性工学会論文誌. 2013;4:493-549.
薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院院長)[体感経過時間]