No.5137 (2022年10月08日発行) P.60
狩野謙一 (福井県立病院救命救急センター)
登録日: 2022-09-27
最終更新日: 2022-09-27
第7波で爆発的に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数が増加した日本は、2022年9月20日現在、新規感染者数が減少傾向を示しています。第7波では、2021年の第5波とは異なり、重症者数は比較的抑えられていたにもかかわらず死亡者数の増加を認めました。死亡者数が増加した原因として、COVID-19自体は株の変異もあり軽症であるものの、合併症を抱えた高齢者が脱水などで衰弱し、感染者数が爆発的に増加した影響で入院ベッドがなく救急搬送困難事例も増加する中で、自宅や施設で経過を診る形となってしまった影響があります。
特に、高齢のCOVID-19患者の救命を行うためにはどんな介入が必要でしょうか。予防のためのワクチン接種が進み、以前の株よりは死亡率が低下したのは事実としてありますが、COVID-19を契機としてもともとの状態が悪化する患者に対しては、入院前からの早期介入がやはり必要です。すぐに入院加療が困難で自宅や施設での加療を余儀なくされる患者に対してモルヌピラビルやニルマトレルビル/リトナビルなどの内服可能な抗ウイルス薬の処方、医師の往診による点滴加療は必要な要素であり、今後、COVID-19患者が再び増加することを想定して整備を進めていく必要があるのかもしれません。
引いてはCOVID-19のみならず敗血症などの早期介入が必要な病態に関しても、医療スタッフが自宅や施設に向かうシステムの整備は検討の余地があります。
また、一般の方ができる対策としては、引き続き手指衛生・マスク着用などの基本的な感染対策、ワクチン接種が大事であると思われます。
【参考】
▶厚生労働省:新型コロナウイルス感染症診療の手引き. 第8.0版.(2022年7月22日)
▶日本感染症学会:COVID-19ワクチンに関する提言(第5版).(2022年7月5日)
https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/2207_covid-19_5.pdf
狩野謙一(福井県立病院救命救急センター)[新型コロナウイルス感染症][敗血症の最新トピックス㉟]