No.5138 (2022年10月15日発行) P.63
柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科医長)
登録日: 2022-09-28
最終更新日: 2022-09-28
インフルエンザのワクチンは不活化ワクチンであり、すべての妊娠期間と授乳中や妊活中の方も安全に接種できます。接種してから抗体の効果が高まるのに2週間かかるため、冬の流行が起こる前の10月の接種がお勧めです。
妊娠中にインフルエンザに感染すると重症化や入院のリスクがあります。一方、妊娠中にインフルエンザのワクチン接種をすると母親の入院リスクは減少し、抗体が胎盤を通じて児に移行し、生まれてきた子どものインフルエンザ感染のリスクを減らすことができます。妊娠中にワクチン接種をしても、胎児の奇形、死産、流産などのリスクは上がりません1)。約4万人の子どもを6歳になるまでフォローした研究では、妊娠中にインフルエンザワクチンを接種しても子どもの自閉症リスクは増加しませんでした2)。
授乳を続けながらワクチンの接種ができます。妊娠中や授乳中の方がワクチン接種をすることで、母体でつくられたインフルエンザの抗体が母乳へ移行し、乳幼児のインフルエンザ感染が減らせると報告されています3)。
新型コロナのワクチンとインフルエンザのワクチンは同時接種が可能になりました(現在、新型コロナのワクチンと同時接種が認められているのはインフルエンザワクチンだけです。HPVワクチンなどは新型コロナのワクチンの前後2週間空ける必要があります)。同時接種では左右の別々の腕への接種が推奨されています。同時接種することで発熱などの全身性の副反応はやや増加しますが、重篤な症状の増加は報告されていません4)。新型コロナのワクチンも妊娠中/授乳中/妊活中に安全に接種できます。冬の流行が来る前に、ぜひワクチン接種をご検討ください。
【文献】
1)Giles ML, et al:Hum Vaccin Immunother. 2019;15(3):687-99.
2)Ludvigsson JF, et al:Ann Intern Med. 2020;173(8):597-604.
3)Schlaudecker EP, et al: PLoS ONE. 2013;8(8):e70867.
4)Hause AM, et al:JAMA Netw Open. 2022;5(7):e2222241.
柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科医長)[安全性のエビデンス]