本稿で記載する学習障害は,DSM-5(「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」)1)の限局性学習症やICD-11(「国際疾病分類 第11回改訂版」)の発達性学習症と同義語とみなす。学習障害は神経発達症(発達障害)のひとつであり,読み書きや計算などの学習能力が年齢相応に期待される程度よりも極端に劣っていることを示す。これらの学習困難は知的能力が低いことや学習に影響する視覚・聴覚障害,その他の身体障害が直接的な原因ではなく,学習の機会が極端に少ないといった環境要因が原因でもない。学習に関連した認知機能の障害を基盤に持つ。
学習障害の主要型を2つ示す。
①発達性ディスレクシア:正確かつ/または流暢な単語認識の困難さ,綴りやデコーディング(文字の音声化)の拙劣さによって特徴づけられる。主に言語の音韻的要素の障害によるものであり,二次的に読解力が低下したり読む機会が減少したりすることで,語彙や知識の増加が妨げられる2)。なお,「ディスレクシア」の名の通り,本来は読字障害を意味するが,実際には書字にも困難を伴うことがほとんどである。
②発達性算数障害:数処理や数の概念,計算(暗算や筆算),数学的推論(文章題)に困難を生じる。発達性ディスレクシアに併存することもある。
知能検査(WISCTM-Ⅳなど)から得られる知的能力を基準にして,現在の学力が成育歴やこれまでに与えられた教育機会・養育環境などから推測されるものとして妥当かどうかを判定する。そのためには,ひらがなやカタカナ,漢字の読み書き,計算の様子などについて具体的に把握する必要があり,現在の学力の確認のために標準化された学習能力検査や認知機能検査を使用することが望ましい2)。また,就学前の読み書きの発達を確認することも重要である。
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