監修: | 増谷聡(埼玉医科大学総合医療センター小児科 教授) |
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編著: | 平田陽一郎(北里大学病院周産母子成育医療センター 小児循環器部門長) |
判型: | B5判 |
頁数: | 312頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2025年02月11日 |
ISBN: | 978-4-7849-2489-9 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
「わかりやすさをとことん重視して“網羅的であること”を捨てました。エッセンスばかりが残っています」(序文より)
「こどもには興味があるけど循環器はちょっと苦手」なあなたにこそ読んでほしい小児循環器の入門書
“縦の軸”と“横の軸”からon the job training!
⇒縦の軸:心臓病のこどもたちの成長や発達,環境の変化・ライフイベントごとに典型的な疾患・所見・問題点を提示。小児循環器診療の視点・考え方のエッセンスがつかめる!
⇒横の軸:小児科医,外科医,多職種,成人循環器内科,胎児・新生児科の視点から,チーム医療の神髄を学ぶ! 「外科医の視点」で心臓手術の“キモ”もわかる!
◆家族からのリアルな質問や回答を豊富に掲載。実際の診療場面ですぐに役に立ちます!
◆フルカラーの豊富な図表,血行動態シェーマ,イラストで見やすく,すっきりとまとめました。
◆小児科医,小児循環器専攻医,看護師,医学生など小児医療にかかわる医療従事者必携の一冊です。
本書の発行に寄せて 山岸敬幸
監修者序文 増谷 聡
1章 外来編
1 胎児の単心室診断と中絶~胎児期での診断と説明のために~ 益田 瞳
2 出生直後に見られるチアノーゼ~TAPVCとPPHNの鑑別を中心として~ 伊藤 淳
3 生後2週の心雑音のないショック~なぜ出生時に診断できなかったのか?~ 小川陽介
コラム1 胎児診断時代における先天性心疾患スクリーニング 豊島勝昭
4 生後1か月児の心雑音~親に不安を与えない丁寧な説明とは?~ 中野克俊
5 生後3か月児の体重増加不良~哺乳不良の原因は何か?~ 平田陽一郎
6 生後4か月児のチアノーゼ~突然のチアノーゼ発作で慌てないために~ 榊真一郎
7 生後6か月児の右側相同の発熱~「全身状態が良いから帰宅」させるか?~ 野木森宜嗣
8 1歳児の発熱と発疹~川崎病心血管合併症への対応~ 髙梨 学
9 3歳児の心雑音~“正しい”心雑音の評価と説明~ 林 泰佑
10 5歳児の胸痛~こどもが「胸が痛い」と言ったなら?~ 北川篤史
11 小学1年生の心電図異常~学校心臓検診の“キホン”~ 高見澤幸一
コラム2 どんな生活習慣が心臓に優しいか? 増谷 聡
12 小学2年生の動悸~動悸を訴えるこどもへの対応~ 朝海廣子
13 小学3年生の疲労感~肺高血圧症とは何か?~ 石井 卓
14 小学5年生の腹痛~劇症型心筋炎を救命する~ 水野雄太
外科医の視点 小児ECMOの回路選択 鹿田文昭
15 中学1年生の心電図異常~突然死リスクの伝え方~ 佐藤 要
16 中学2年生女性の入院拒否~Fontan術後遠隔期の問題点~ 本田 崇
コラム3 移行期支援外来の役割と将来 森﨑真由美
17 高校1年生男性の心雑音~そんな突然に心臓移植と言われても…~ 浦田 晋
コラム4 小児心臓移植医療の現状と未来 進藤考洋
18 大学4年生の憂鬱~大人になりゆくCHD患者を支える~ 田中 優
コラム5 小児科医と循環器内科医でつなぐ成人先天性心疾患診療~循環器内科医の目線から~ 郡山恵子
19 22歳女性の計画外妊娠~次世代へバトンをつなぐ~ 石戸博隆
コラム6 保険医療制度(指定難病と身体障害者)と就労支援 檜垣高史
コラム7 小児循環器医にとってのリサーチマインド 犬塚 亮
2章 外科治療編
1 心室中隔欠損症 閉鎖術~Eisenmenger症候群を防ぐ~ 平田陽一郎
外科医の視点:VSD閉鎖術 鹿田文昭
2 心房中隔欠損症 閉鎖術~デバイスか手術か?~ 大森紹玄
外科医の視点:MICSについて 鹿田文昭
コラム8 日本の先天性心疾患診療の今昔 賀藤 均
History Gallery 心エコー開発以前の診断技術 平田陽一郎
3 BTシャント手術~high flowショックとは何か?~ 白神一博
外科医の視点:シャント手術の変遷 鹿田文昭
4 肺動脈絞扼術(PA banding)~準備手術の面白さと難しさ~ 山形知慧
外科医の視点:心膜切開後症候群鹿田文昭240
5 Glenn手術~なぜ上半身だけつなぐのか?~ 真船 亮
外科医の視点:乳び胸の外科的(侵襲的)治療 鹿田文昭
6 Fontan手術~単心室循環の光と影~ 岩本洋一
外科医の視点:房室弁形成の戦略 鹿田文昭
7 Norwood手術~左心低形成症候群に挑む~ 金 基成
外科医の視点:Norwood手術時のポイント 鹿田文昭
コラム9 日本の先天性心疾患の歴史:心臓外科医の視点から 宮地 鑑
編者あとがき 小児循環器を次世代につなぐ 平田陽一郎
巻末資料
索 引
本書は小児循環器の入門書です。各項は診療時の心の動きに沿って展開されます。考えながら読み進めて頂くとon-the-job trainingになります。わかりやすさをとことん重視して“網羅的であること”を捨てました。エッセンスばかりが残っています。小児循環器疾患の頻度は高く,小児科医であれば必ず出会います。大切な小児循環器の視点・考え方・基礎知識が心に刺さるよう,本書は小児循環器の肝である2つの軸を大切にしています。それは個々の患者さんの生涯・時間という縦の軸と,その時々の全般を俯瞰する横の軸です。
まず,個々の患者さんの縦の軸(1章)です。病歴・主訴・身体所見から鑑別診断を考え,検査計画を立て診断し,治療計画を立てます。その際,一生涯を見据えて診療を進めることは小児循環器診療の特徴であり,やりがいでもあります。成人と異なり,小児期は発達・発育がみられ体と心が大きく変化していきます。幼稚園・保育園,学校,運動,就労,妊娠・出産といった環境の変化やライフイベントに際し,個々の課題がダイナミックに変わります。
もう1つは全般を俯瞰する横の軸です。課題は小児循環器だけにとどまりません。本書には外科や多職種,成人循環器,胎児・新生児の視点も入っています。小児循環器診療はチーム医療です。中でも診療に占める手術のウェイトは大きく,2章では代表的で重要な7つの手術(病態)について外科医からの視点を一緒に学ぶことができます。
本書は年齢ごとの典型例から,小児循環器の視点・考え方の基本骨格を作ることができる構成にしました。その結果,目次に疾患名が並ぶ教科書とは大きく異なります。診療は,人が人をみます。「家族からの質問・説明」にも重点を置きました。個々の患者さんの人生という縦の軸と,多角的にとらえる横の軸をとらえ,小児循環器診療の大枠をつかみ入門のレベルを超えていきましょう。
本書の想定読者層は医学生,多職種の皆様,小児循環器を専門としない医師・小児循環器専攻医までですが,小児循環器専門医の皆様にも手に取って頂けましたら嬉しく思います。
気鋭の執筆陣の皆様,編集部の皆様に心から感謝いたします。最後に,本書は編集者である北里大学の平田陽一郎先生が企画し執筆陣の皆様とともに丁寧に仕上げ,一本の筋を通しておられました。本書によるon-the-job trainingにかける彼のほとばしる情熱と思い入れは285ページの“編者あとがき”をご覧下さい。伝承もまた人と人。皆様との出会いにも感謝いたします。
令和6年初夏
埼玉医科大学総合医療センター小児科 教授
増谷 聡