著: | 菊池良和(九州大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 助教) |
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著: | 福井恵子(九州大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科) |
著: | 長谷川 愛(九州大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科) |
判型: | B5判 |
頁数: | 208頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2021年08月28日 |
ISBN: | 978-4-7849-5850-4 |
版数: | 第1 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
エントリー編
1 吃音の始まる時期
2 利き手矯正と吃音の波
3 吃音の自然回復と気づき
4 吃音の3症状、ほどよい緊張と吃音の関係
5 小学校・中学校・高校で困る場面
6 電話ピラミッド、吃音軽減法
7 「ゆっくり話して」という大人、オペラント学習
8 社交不安障害とその解決策
9 吃音の自然経過と合理的配慮
ベーシック編
1 吃音の原因は生まれ持った体質が大きいのでしょうか?
2 吃音は遺伝が関係すると聞きましたが、家族・親戚に1人も吃音者がいないことはあるのでしょうか?
3 育児が大変で母親が精神的に不安定だったから、吃音が始まったのでしょうか?
4 母親が日本語、父親が英語の2言語環境だったから吃音が始まりやすかったのでしょうか?
5 吃音の発症後、初診で軽度ならば早期に治るのでしょうか?重度であれば必ず治療しないと軽減しないのでしょうか?
6 4歳の時に吃音のある子どもは、7歳までにどのくらいの割合で治ると伝えていいでしょうか?
7 吃音が治りにくいと判断される年齢はあるのでしょうか?
8 10代まで吃音が続いていると「治る」ことはないのでしょうか?
9 本人が感じる「治る」・「再発」の定義はあるのでしょうか?
10 吃音によるいじめが心配です。吃音に伴う不利益を早期に把握する方法はありますか?
11 海外では吃音のある子のいじめ予防となる授業を行っているのでしょうか?
12 吃音者がカミングアウトをすることで、どんなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
13 カミングアウトをすると、吃音者のQOLが向上する可能性はあるのですか?
14 何歳から吃音を啓発することができるのでしょうか?
15 クラスに吃音の児童・生徒がいる場合、教師はどのように配慮すればいいのでしょうか?
16 子どもの時に吃音があると、その後の学業や仕事の面で負の影響があるのでしょうか?
17 吃音者の収入に関する研究があれば教えてください。
18 アメリカでは10代の吃音者向けの宿泊イベントがありますが、どのような効果があるのでしょうか?
19 吃音のある子どもは知的に劣っているのでしょうか?
20 わが子が不器用なのですが、タイミング障害ともいわれている吃音と何か関係ありますか?
21 吃音児に対して、親の心配度に性別差はありますか?
22 吃音に効く食べ物はないのでしょうか?
Column
1 180°既成概念を変えたリッカムプログラム
2 『幼児吃音臨床ガイドライン』を違った視点で見る
3 RESTART-DCMってどんなセラピー?
4 いくつ知っていますか? オーストラリアの吃音プログラムの地名
5 吃音の脳研究を始める人が知っていると良い情報
6 本書で取り上げた研究を行った大学の所在国
7 吃音の重症度を測定しよう
アドバンス編
1 成人の吃音者は、訓練前後では脳のどこが変化するのでしょうか?
2 なぜ、女児は男児よりも自然回復しやすいのでしょうか?
3 自然回復する脳の変化は見つけられているのでしょうか?
4 吃音の原因遺伝子はどこまでわかっているのでしょうか?
5 吃音遺伝子が関与する脳神経細胞の変化は見つかったのでしょうか?
6 吃音の動物研究はあるのですか?
7 吃音マウスの脳研究はあるのですか?
8 なぜ吃音は男の子が多いのでしょうか?
9 外国では吃音治療のガイドラインはあるのでしょうか?
10 リッカムプログラムを行った保護者に共通する体験を知りたいです。
11 オンラインビデオ通話診療でのリッカムプログラムは、対面診療と比べて同等の効果があるのですか?
12 リッカムプログラムを行える言語聴覚士が少ないのであれば、グループでのリッカムプログラムを試してみてはどうでしょうか?
13 吃音のある幼児に対するリッカムプログラム以外の「間接法」はあるのでしょうか?
14 吃音のある幼児に対するリッカムプログラム以外の「直接法」はあるのでしょうか?
15 直接法・間接法以外に、吃音に良いと考えられている子育て法はありますか?
16 小学生に有効なエビデンスのある吃音軽減法はあるのでしょうか?
17 中学生・高校生向けにエビデンスのある治療法はあるのでしょうか?
18 セラピストとの関係の善し悪しは、吃音治療の効果に影響を与えますか?
19 遺伝子の違いで、吃音治療効果に違いがあるかを示した研究はありますか?
20 脳研究が進んでいますが、脳を刺激することで吃音を軽減させた研究はありますか?
21 新しいテクノロジーを使った研究はあるのでしょうか?
22 日本の吃音自助団体「言友会」は吃音者の社交不安の改善に役立っていますか?
23 「吃音に関する役に立たない考えと信念の評価尺度(UTBAS)の短縮版はありますか?
24 社交不安障害の認知行動療法はどのように行うのですか?
25 社交不安障害の治療にインターネットを使ったものがありますか?
26 吃音に対して海外で承認されている薬はありますか?
27 アメリカの研究者が新しく注目している薬などはありますか?
28 リッカムプログラムとRESTART-DCMでは、費用対効果はどちらのほうがいいのでしょうか?
巻末資料 1
幼稚園・保育園の先生へ
学校の先生へ
中高校生の先生方へ(吃音の情報)
吃音のある学生が在籍する大学等の教職員の皆さまへ
医療系大学等の教職員の皆さまへ
吃音のある方を雇用する企業の皆さまへ
巻末資料 2
1 吃音重症度SSI-4(SSI-3は旧版)
2 K6日本語版
3 吃音が治ったか、持続しているのか? の質問紙
4 過去と現在の発話状態を確認する14項目
5 PATCS-40(吃音児に対する同級生の態度)
6 吃音のカミングアウト・開示度問診票
7 生活の楽しみ・満足度に関する簡易QOL調査票(Q-LES-Q-SF)
8 子どもの吃音に対する親の反応(RSDS)
9 オンライン治療体験の問診票
10 作業同盟短縮版(WAI-SR)
11 ライト・アリー吃音自己評価表(WASSP)
12 自覚的吃音困難度に関する調査(PSI)
13 コミュニケーション不安に関する認識レポート(PRCA-24)
14 吃音に対する役に立たない考えと信念の評価尺度(UTBAS-6-J)
15 RESTART-DCMでの親子関係用紙
巻末資料 3
リッカムプログラム:10のお気に入りの活動
「子どもの吃音の相談をしたいのですが……」と保護者から言われた時、
「もちろん、いいですよ」と、快く答える医師や言語聴覚士などの医療専門職の方はどのくらいいるのでしょうか?
「しばらく様子を見ましょう(期限を言わずに)」
「私の前では吃音が出ていないから、大丈夫」
「7歳くらいまでには治ると思います」
「親のしつけが厳しいんじゃないの?」
「愛情が足りていないんじゃないの?」
「本人に吃音があることを気づかせないように」
なんとなく、こうアドバイスする方がいますが、これらはNGワードです。
「どうやったら、吃音相談に自信が持てるのですか?」と医療職の方に質問されたら、
「最新のエビデンス(科学的根拠)を知っていることが、一番の早道です」と答えています。
エビデンス=吃音相談の熟練者の仮説を、実際測定して確かめることです。
様々な吃音のエビデンスを知ることが、吃音相談の熟練者に早道で近づけることを意味します。本書を読んでエビデンスを知ることにより、吃音相談に自信を持てる医療専門職が増えて欲しいです。
また、海外の色々な研究論文を知ることにより、日本の吃音研究者も増えて欲しいと思います。
ベーシック編とアドバンス編の各Q&Aに、取り上げた論文の研究手法を簡単に紹介しています。2013年から日本吃音・流暢性障害学会が毎年開催されていますので、吃音研究を志している方は参加されてみてはいかがでしょうか?
本書の内容は、エントリー編、ベーシック編、アドバンス編、巻末資料の4部構成となっています。
エントリー編では、2010年以前のエビデンスで、現在でも使えるものと、実用的な合理的配慮の話を書かせていただきました。
ベーシック編では、 主に2009年以降の英語論文で発表されたエビデンスを紹介しました。わが子に吃音が始まった保護者がまず疑問に思い、不安を感じる原因、自然経過、いじめとカミングアウト、教師の役割などをQ&A形式で説明しました。
アドバンス編では、 ベーシックと同様に2009年以降の英語論文で分かったことをまとめました。世界の吃音研究はどこまで進んでいるのか、遺伝学、脳科学、吃音軽減法、社交不安症、薬物療法、社会経済学的研究のエビデンスを紹介しました。
巻末資料として、保護者が先生などに吃音を伝える際に役立つ資料を載せました。また、ベーシック編、アドバンス編で使用した問診票の一部を和訳しています。研究の理解に役立てていただけると幸いです。
読みやすくするための工夫として、母親と筆者(菊池)の会話形式を取り入れました。
テンポよく読み進めていけるのではないかと思っています。ベーシック編、アドバンス編では最新の50編の英語論文を各QA冒頭に紹介しました。
本書を通して、「保護者からの質問に自信を持って答える」ことのできる医師、医療・福祉・教育関係者が増えることを期待します。その結果、吃音に悩む本人・保護者が減ることを期待しています。また、吃音研究の大切さが広まり、研究に協力していただける方が増えることも期待しています。
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。