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【識者の眼】「コロナ5類で救急現場に起こり得る変化は?」薬師寺泰匡

No.5154 (2023年02月04日発行) P.69

薬師寺泰匡 (薬師寺慈恵病院院長)

登録日: 2023-01-25

最終更新日: 2023-01-24

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地域差はありますが、新型コロナの第8波が救急医療に大きく影響しています。「これまでこのようなことは起きたことがなかった」と皆が口を揃える程に状況は逼迫しており、過去に類を見ない危機と言えます。岡山県でも、20件以上連絡しても搬送先が見つからないケースが連日発生し、搬送を諦めるケースも出ています。

発熱患者、特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)確定例は入院先の確保も難しく、救急車をスタックさせてしまう例も多く発生しています。現状、COVID-19関連であれば保健所や県庁が搬送先や転院先の調整を行っていますが、ギリギリどころか既に回っていない状況です。そしてこのタイミングで政府がCOVID-19の5類感染症への変更を検討するというニュースが流れました。

救急医療に与える影響について考えてみます。5類になると、これまで行政が行っていた入院調整システムがなくなることが予想されます。しかし、入院が必要なCOVID-19の方は今後も発生するはずです(悪いことに、マスクを外して感染拡大に寄与する方針も政府が出しています)。初療医が入院先や転院先の調整を行う必要が生じ、もしかすると消防にそれをお願いする例も出るかもしれません。病床逼迫下では簡単に見つかるはずもなく、初療と救急搬送がそこでストップするリスクを抱えます。どのような受け皿を作れるか、地域で検討が必要です。

また5類になると入院勧告がなくなり、医療費は公費ではなくなる可能性が高くなります。移行措置を図る方針と報じられていますが、増大するCOVID-19関連医療費を少しでも減らしたいという思惑もあるでしょうから、保険診療に変えつつCOVID-19関連の補助金等は無くなっていくことが想定されます。

ここで問題になるのは、救急医療管理加算です。現在、入院を要する患者については救急医療管理加算1(950点)の4倍にあたる3800点が、呼吸不全がある場合には6倍にあたる5700点が算定可能となっています。これがなくなると、おそらくCOVID-19に関する救急診療は大幅減収になります。他の病床を割いてまでCOVID-19診療を行う理由がなくなると、多くの病院がCOVID-19診療から手を引き、入院病床がさらに減ることは容易に想像できます。

当院としては赤字にならない範囲で、できる限りのことをしたいとは考えておりますが、どうなるか。政府には起こり得る負の側面もしっかり共有していただきつつ、混乱が最小限で済むよう願います。

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院院長)[新型コロナウイルス感染症]

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