中央社会保険医療協議会は2月15日の総会で、新型コロナウイルス感染症治療薬ゾコーバ錠について、薬価上の特例的対応の案を了承した。類似薬効比較方式による薬価算定の際に複数の医薬品を比較薬とすることや、急速な市場拡大に速やかに対応できるように患者数や投与割合などから算出した推計年間販売額で市場拡大再算定の特例(特例拡大再算定)の適用を判断することなどを盛り込んだ。
ゾコーバ錠は、市場規模が年間1500億円超になると見込まれる高額医薬品が対象の新ルール(2022年度薬価制度改革で新設)を初めて適用。通常の薬価算定の手続きに先立って、中医協で同剤に限定した薬価上の特例的な対応が検討されてきた。その目的は、医療保険財政への影響を最小限にとどめることにある。
15日に了承された対応案によると、初めて薬価収載する際には、類似薬効比較方式で薬価を算定。その際の比較薬の選定では、既存の新型コロナ治療薬とインフルエンザ治療薬のどちらを採用するかで算定薬価が大きく変動する同剤の特殊性を考慮し、「類似薬の中から複数の比較薬を選定し薬価を算定するなどの対応を行う」とした。補正加算など、これ以外のルールは通常の考え方に沿って適用する。
薬価収載後の価格調整でも特例的な対応を行う。市場拡大再算定のうち、年間販売額が極めて大きい品目(年間販売額が1000億円超、または1500億円超)を対象とする特例拡大再算定の適用の判断に、通常の薬価調査や「レセプト情報・特定健診等情報データベース」に代えて、新型コロナの患者発生状況、同剤の投与割合、出荷量等から算出した年間販売額の推計値を採用。より早く入手できるデータを用いることで、市場動向の変化の薬価への速やかな反映を目指す。
関係業界は2月9日に行われたヒアリングの際、推計データで特例拡大再算定の適用を判断する対象を、年間販売額が1500億円超の場合に限定するよう求めたが、認められなかった。
推計データで特例拡大再算定を行う場合の薬価の引き下げ率の上限については、「予想販売額によって影響が異なるものであり、引き下げへの激変緩和等も考慮した上で、現行制度どおりとすることも含め慎重に検討する必要がある」と指摘。薬価収載時に総会で改めて検討するとした。