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特集:〈オンライン診療レベルアップ〉オンライン聴診の使い方と有用性

No.5172 (2023年06月10日発行) P.18

廣澤孝信 (獨協医科大学総合診療医学・総合診療科講師)

登録日: 2023-06-09

最終更新日: 2023-06-08

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2006年東京大学工学部航空宇宙工学科卒業。11年筑波大学医学群医学類卒業(編入)。沖縄県立中部病院内科研修,沖縄県立八重山病院内科勤務を経て,16年から獨協医科大学総合診療医学・総合診療科の立ち上げに参加。主な研究テーマは,オンライン聴診をはじめとするオンライン診療やAI chatbot。

1 オンライン診療における身体診察
新興感染症の流行に伴いオンライン診療のニーズが高まっている。しかし,身体診察が行えないため,情報不足が懸念されている。より質の高いオンライン診療の普及を促進するため,オンライン診療でも身体診察を行うことを可能とする技術開発とその検証が重要である。その取り組みとして,遠隔打診,遠隔触診,また,医療従事者の指示に従って患者自ら身体診察を行うユニークな方法,オンライン聴診などが開発・提唱されてきた。これまでは,オンライン聴診は物的・制度的・心理的な制限があり普及しなかったが,これらの制限がなくなりつつあり,今後普及することが望まれる。

2 オンライン聴診とは何か?
これまでの対面診療での聴診は,古典的な聴診器を用いて患者の生体音をその場にいる医療従事者が聴診していた。オンライン聴診では,離れた場所にいる患者の生体音を,電子聴診器やオンライン診療システムを介して医療従事者が聴診を行うことになる。具体的な方法としては,電子聴診器を用いてデジタルデータに変換した生体音を,インターネットを介してオンライン診療システムで接続されたデバイスに送ることで,離れた場所にいる医療従事者が生体音の聴診を行うことができる。

3 オンライン聴診の利点
オンライン診療にオンライン聴診を組み込むことで,生体音の聴診も行うこともでき,対面診療により近い診療が行える可能性がある。また,生体音のデータを記録することで,ベースラインとの比較や,複数の医療従事者による確認も可能となる。さらに,人間の耳だけでは判別できない変化を検出するといった可能性も考えられる。筆者らの研究や海外の研究でも,オンライン聴診には従来の聴診器を用いる直接聴診と比べても遜色のない有用性があることが示唆されている。

4 オンライン聴診の注意点
オンライン聴診には利点も多いが,オンライン聴診の方法自体が確立していないことに注意する必要がある。また直接聴診に比べると,特定の生体音においては改善の余地があることが示されている。このことは,生体音のデジタル化や通信に伴う変化と考えられ,直接聴診との違いを考慮した上で用いる必要がある。

5 今後の展開
将来的には適切な診療補助を組み込むことで,オンライン聴診がより有用になっていくことが期待される。また,今後様々なセッティングでの実証や応用が期待される。医療面接や身体診察はこれまで医療従事者個人の経験に依る面が大きかった。しかし,今後はオンライン聴診のみならず,大規模言語モデルといった新しい技術が,医療界を含めた各方面に影響をもたらすと考えられる。新たな情報技術が加わることで,医療面接や身体診察の価値をより高め,患者のためになる,より質の高い医療につながることを願っている。

伝えたいこと…
オンライン聴診は,より質の高いオンライン診療を行う上で有用である。また,直接聴診と比べても遜色のない有用性があることが示唆されている。ただし,生体音のデジタル化や通信に伴う変化も考慮した上で,その特性を理解し用いる必要がある。

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